松宮史朗・訳 新潮文庫 平成17年
今回は三島由紀夫氏 をみてゆこう。ぼくは三十代の頃、
「葉隠入門」を座右の書として、ボロボロになってしま
うまで読み倒したほどだが、四十代になって、不意
に考えが変わり、ほっぽり出してしまった。
三島氏は夭折にすごい憧憬の念を抱いていたようだ。
若くして死ぬことを美と考えていたようだ。そこら辺が
ぼくと違うところだった。ぼくは長生きしたいと、
痛切に願うようになっていった。美に生きた三島氏
ならではの切腹と云う儀式をどう解釈するか? もう
書けなくなったからだ、とする大方の見解に、切腹
する前日まで「豊饒の海」を書いていた、と書き、
そうではなかったのでは、と暗に言っている。
自身美を追求する余り、夭折の道を突き進んだ三島。
金閣寺を燃やした青年と話したが、附け加えることは
なかった、と語った。美とは、人を惹き付けてやまない
究極の現代人のテーマだ。
(読了日 2024年10・8(火)23:15)
(鶴岡 卓哉)