古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

漫画の行方       筒井康隆

2021-12-21 00:49:55 | 筒井康隆

「壊れかた指南」所収   文春文庫  2006年

 

2篇の漫画の原稿を二人の編集局のひとに渡した

 

と思っていることが発端となり、果たして、その原稿は

 

本当にあったのか、どうなのか、夢と現(うつつ)の

 

間をさ迷い歩くような短篇。

 

果たして、これは夢なのか、書いていた自分はリアルか、

 

虚無か、作品というものの危うさ、その存在の意義。

 

果たして、あの作品は本当に自分が確かに書いたかと

 

問われれば、うーん、書いていないような気がすることも

 

確かにある。作品はあるからこそ、書いたという証左とな

 

るわけで、作品がなくなったら、書いたか自信なくなるのは

 

よくわかる。特に、ぼくなんかまだ、本になっていないから

 

リアルに書いたか、実感が伴わない。充足感はあるがね、しばらく

 

経つと、どうでもよくなる、というのは、あるな。……合掌。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新解さんの謎      赤瀬川原平

2021-12-20 19:40:01 | 本の紹介

文藝春秋      1996年

 

新解さんとは辞書の新明解国語辞典のことである。それに

 

よると、読書とは、横になって、だらしなく読むのは読書

 

とは言わないらしい。佐野洋子女史はねそべって読んでいた

 

らしいから、あれは読書ではなかったらしいね。辞書を新解

 

さんと人に見立てて、その解読を楽しんでいく、っていう趣向

 

だ。

 

その次に、「紙がみの消息」と題して、現代における紙につい

 

ての考察を行っている。余白について、上品なのは余白がたく

 

さんとってあり、ぎっしりつめつめなのは、実質だ、と言って

 

いる。「お礼」についても言及していて、「おふだ」、「おさつ」

 

紙は神であり、神格化することによって、お札を大切に扱う風土が

 

日本にはある、といっている。いろいろ考えさせることがいっぱい

 

あって、原平氏を知らない人にも是非読んで欲しい。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アジア赤貧旅行 だからアジアは面白い   下川裕治

2021-12-19 08:29:06 | 本の紹介

徳間文庫    1991年

 

30年以上前の東南アジアが、中国や韓国が貧しかった頃に

 

書かれた本書。おカネをほとんど持つことなく、旅を続け、

 

様々な経験を積んでいった、下川氏。この本をぼくは列車の

 

通る音を聞きながら読んでみたのだが、実に羨ましかったぞ。

 

バタン料理というインドネシアの食べたら食べた分だけ払う

 

システムの料理のことや、アジア人の欧米人に比して味覚の

 

鋭敏さに言及した文章など、詐欺師たちの話もイキイキと

 

描かれる。決して、暗くなく、明るく前向きで、ひたすら旅を

 

楽しんでいる感じが伝わってくる。あの頃、アジアはやはり

 

輝いていたのだなあ、と思う一冊。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本などいらない草原ぐらし   椎名誠

2021-12-18 01:04:01 | 本の紹介

角川文庫   1995年

 

シーナ氏が読んだ本についてのあれこれが書いてあり、

 

この世には、こんなにオモシロ本があふれておるのだ、

 

と改めて開眼させられる。いろいろ調べてみるんだが、

 

今はどの本も値段が高くなっていて、ぼくのようなボ

 

ンビーな本好きには手が届かないものばかりだ。

 

そういう意味じゃ、シーナ氏は稼いでいるだけあって

 

読書界の中でもセレブだ。そう言うときっとシーナ氏

 

は怒るだろうけど。

 

ゴカイ、イソメを食べるわけはない、と思っていたけど

 

やっぱりあの中国人は食べていたらしい文章を見つけ、

 

勇んで、買って、読み耽る。

 

ぼくは人の読んでいるところを見たり、聞いたりするのが

 

好きだから、正に、好物が詰まった本である。

 

一日中、読んで、一日で読んでしまった。そうだな、そう

 

いうのをヒマ人というんだったっけ? ……合掌。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おなかがすいたハラペコだ。     椎名誠

2021-12-17 03:20:25 | 本の紹介

集英社文庫     2015年

 

まず、野菜のなかで何が一番エライか、という

 

問題からはいる。答えは、タマネギである。

 

どう料理しても、うまい、し、なんでも受け

 

入れてくれる懐の深さは、エラインダ、そう

 

である。

 

椎名氏の小学生のときのあだ名は、「コッペ

 

パン」だったそうだ。「高橋精肉店の息子」

 

のあだ名は「コロッケ」。まあ、ホントに

 

しょーもないプチ情報やな。それから、いろいろ

 

猿だの、ワニだのを食べた話になる。猿はぼくは

 

食べたくはないな、ワニもムリっぽい。辺境の地

 

に行ったら、すぐに痩せて帰ってくるんじゃないかな。

 

あと、キャンプの料理でいいのは天ぷららしいね。

 

シーナさん情報で欠かせないのが、「ながもの」好き

 

ということね。うどん、ラーメン、そうめん、とか、

 

なんでも麺に限らず、長いもやしなんかでもお好き

 

らしい。

 

ぼくもシーナさんに影響され、「ながもの」が好き

 

になってしまった。一番好きなのは、サッポロ一番

 

塩ラーメンだ。……合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大往生     永六輔

2021-12-16 02:43:47 | 本の紹介

岩波新書     1994年

 

1994年の大ベストセラー、一周回って、忘れたり、知らない方も

 

いらっしゃるんではなかろうか。

 

名言の数々が、市井の人たちによって語られているのを集めている。

 

その言葉は、おもしろい、といっちゃ、失礼かもしれないが、実に

 

おもしろい。死はおもしろいのかもしれない。

 

ぼくも死ぬならおもしろく死にたい。涙に暮れるのはイヤだ、という

 

一方、小中高生の400余人の自殺者が言葉なき反抗となって、ぼく

 

らに教えているだろう。なんで、彼ら、彼女らは若くして死ななくては

 

ならなかったか。死というものが、分からなくなっているんじゃない

 

のかとも思う。死や、老い、は隠しておくという文化が、今になって、

 

じわじわと我々を苦しめてくるのではないか。一旦、死というものの

 

意味を考えてみるのもいいのではないか、そこから、生というものも、

 

見えてくるかもしれないから。……合掌。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

わたくし率イン歯ー、または世界    川上未映子

2021-12-15 01:19:24 | 川上未映子

講談社文庫   2007年

 

津原泰水の黄昏抜歯からの盗作を揶揄されている作品で

 

これに対し川上女史は明確な解答をしていないらしい。

 

この問題では、ぼくはそんなに盗作めいていないんじゃ

 

ないか、と思っている。歯をテーマに書けば似てくるイ

 

メージもあるわけだし、歌手が他人の歌をうたっちゃい

 

かんというわけでもなかろう。この「わたくし率~」は

 

確かに川上女史が自分のものにしていると感じられた。

 

イメージを借りるっていうのは、別にいいんじゃないか、

 

と思うけどね。もっとあからさまに、昔の話をモチーフに

 

パクっている作家はけっこういるしね。

 

それに、たぶん津原氏の作品より、川上女史の作品の方が

 

おもしろく書けてるんじゃないか、と思う。そこら辺が逆に

 

問題だったりするのかもしれませんね。

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

娘はどこに     遠藤周作

2021-12-14 05:01:40 | 小説の紹介

「小説宝石」70年12月

 

この、「第二怪奇小説集」のトリを飾るこの作品。

 

シナリオライターの坪井が隣りの部屋から男のすすり泣きを聞く、

 

ここで多くの読者は亡霊的なものを想像しがちだが、これはアメリカ人

 

のすすり泣きと分かり、このアメリカ人は娘を探しに来たのだ、という。

 

ディレクターの坂上を巻き込み、このダンという男の娘を探す番組を作

 

ることにする。

 

でも、娘は見つからず、フーテンの女を見繕って、娘に仕立て上げる。

 

そして、クライマックス、ダンは実は詐欺師で、話は全部でたらめだった、

 

ということが明かされる(ネタバレ!)。ニセの娘を仕立てたことを坪井は

 

悔んでいた部分があったので、それを知った坪井は低い声で笑った。夜を

 

共にしたいと言った娘を暴行したダンを訴えることもできなかった、という

 

顛末。なんかどこか痛快な話であった。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

口笛を吹く男      遠藤周作

2021-12-13 03:10:33 | 小説の紹介

「週刊小説」72年2月

 

7Pの掌編小説である。ニ十分くらいで読み終わってしまった。

 

熊大の浪人生が隣りのアパートの一室に住んでいて、クワイ河

 

マーチと言う、ぼくの知らない曲を下手くそに吹いているそうな。

 

焼き芋とか果物とか、失踪した弟に似ていたことから、差し入れを

 

していたが、また、今年も受験を失敗して、恥ずかしかったらしく

 

礼も言わず、ある日、引っ越してしまった。縁談があり、相手は

 

妻と死に別れて二人の子持ちという、どう生きても倖せになれない

 

と悟った彼女は、よろしくお願いします、と手紙を書く。その翌日

 

福岡で北朝鮮に逃亡するというハイジャック事件が起き、その犯人

 

の写真の中に、弟に似た浪人生の顔を発見する、という筋立てだ。

 

さすがなかなかよく出来た話であり、その小さな世界に引き込まれ

 

てしまった。……合掌。  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人食い虎       遠藤周作

2021-12-12 13:41:06 | 小説の紹介

「別冊文春」60年9月

 

インドものであり、周作氏にインドものといえば、

 

深い河という名作があると思うのだが、これはひ

 

とつのお仕事小説じゃないかと思う。

 

あんまり怪奇な感じはなく、とつとつとインド批判

 

が続き、なんてことのない小説だ。

 

ラストがとってつけたように、人食い虎と関連付けて、

 

終わっているが、そのほかは特に変わったところのない

 

変哲のない小説であり、ぼくはこれは正直すぎる意見

 

かもしれないが、おもしろくなかった。

 

といっても、ぼくはインドもの大好きのひとであり、

 

インドのことが描いてあればオーケイというひとなので

 

御多分に漏れず、この小説もじっくりと拝読いたした。

 

でも、ということだろう。文章はとてつもなく巧かった。

 

それがこの短編を支えていた。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする