古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

月島物語 四方田犬彦

2024-11-20 14:37:57 | 本の紹介

集英社文庫 1992年

 

丁度、「ストレンジャー・ザン・ニューヨーク」

 

と出会い、読了し、次に出くわした四方田氏の

 

本が「ストレンジャー・~」のあとの話しになる

 

本書だった。ニューヨークに住んだ後、月島に

 

住むって、なかなかどうして、面白い人だ。

 

月島は文字通り島で、泥棒が入っても橋を封鎖

 

すれば良いらしいので、泥棒もいないから、

 

鍵も鍵屋に行くと同じのが幾つもあるんだそうだ。

 

小津映画に出てきそうな、長屋に住み、二時、三時

 

まで起きて仕事をし、友達は来るわ、酒は飲むわ、

 

で先生と呼ばれる人の生活も実に楽しそうだ。

 

レバカツと云うのがあるそうで、牛のレバーを揚げた

 

のだそうだが、吉本隆明氏が氏のところに遊びに来た

 

折、六本ペロッと食べてしまったという。吉本氏は

 

月島の出身と云うことだ。

 

東京の下町研究の書としては、面白さでも秀でていて、

 

四方田氏のファンを自称してもいいと思うのだ。

 

(読了日 2024年11・2(土)22:07)

               (鶴岡 卓哉)

 

 

 

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旱魃(かんばつ)世界   J・G・バラード

2024-11-17 01:45:09 | 小説の紹介

山田和子・訳 創元SF文庫 1965年

 

破滅三部作の一角を成す、街が燃えてしまう

 

「燃える世界」を改変した完全版。

 

マネキン、白いライオン、炎、両性具有などの

 

終末をイメージさせる、想像力に富んだ、ディス

 

トピア小説。

 

J・G・バラードと云う人の小説を一度読んでみたい

 

と思っていたら、偶然、手に入ったので、熟読した。

 

SF的に顕著な文章で、手のひらから零れ落ちていくような

 

感じだが、それも次第に心地よくなってくる。

 

ああ、こんな世界がリアルに来たら、イヤだなあ、と

 

思考しつつ、ラストにはひと筋の希望が射したので、

 

おう、と唸った。いつかは滅ぶだろう、この地球上に

 

住む人間の儚さ、愚かさ、が滲み出ていた。

 

(読了日 2024年10・26(土)12:30)

                 (鶴岡 卓哉)

 

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いつか旅する人へ 勝谷誠彦

2024-11-16 03:59:32 | 本の紹介

講談社文庫 1998年

 

紀行家と云う肩書きをもった第一作だということだ。

 

なんでも、一発目は良いという通り、本書は何とも

 

良かった。

 

文章が技巧的でありつつ、素直な心情の風景を

 

活写していて、読んでいて心地よかった。

 

第一章では、ユーモア、冗談を交え、軽快な文章

 

で攻めて来るが、第二章以降は軽い感じは影を

 

ひそめ、シリアスに攻めて来る。手紙と云う形

 

であったり、旅を誰かと共に行ったりする。

 

ぼくは、やはり第一章が一番楽しく読めた。

 

このまま、行くのかと思ったが、がらっと作風

 

を変えて来たので、おや、と思った。

 

外国を旅すると、日本の素晴らしさが分かると言う。

 

ぼくもいつか日本を巡る旅をしてみたい。

 

(読了日 2024年10・25(金)15:00)

                (鶴岡 卓哉)

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一杯のおいしい紅茶 ジョージ・オーウェル

2024-11-15 13:32:41 | 本の紹介

小野寺健・訳 中公文庫 2020年

 

ジョージ・オーウェル氏と云えば、「動物農場」

 

と「一九八四年」を書いた作者として有名で、

 

二作品とも読了済みだ。

 

手紙から、類推するにオーウェル氏と云う人は

 

とても誠実で実直な方であったようだ。作家に

 

なる為にあらゆる努力をしたという感じを受ける。

 

子供の頃の帝国主義の洗礼により社会主義者になり、

 

全体主義を批判するような、「一九八四年」を描

 

いたらしい。この人は社会派の作家ということが

 

出来る様だ。本書でも冒頭のエッセイで、「一杯の

 

おいしい紅茶」と言うタイトルで、おいしい紅茶の

 

淹れ方について考察している。けっこう、口説い所が

 

あるようで、綿密にそこら辺は描かれている。

 

47歳で若くして、肺結核で亡くなっている。

 

本名、エリック・アーサー・ブレア。1946

 

年頃のエッセイだが、今でも読み継がれるには

 

それなりの理由があるのだろう。

 

(読了日 2024年 10・24(木)23:05)

                  (鶴岡 卓哉)

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街角の煙草屋までの旅 吉行淳之介

2024-11-14 04:16:22 | 本の紹介

講談社 2009年

 

副題的に、吉行淳之介自身による吉行淳之介③とある。

 

ケストナーの「ファビアン」に「ちょっとの違いが

 

大きな違い」とあるらしく、開高大兄と、我々はそ

 

こを読み外さない、と語っておられた。

 

1979年のエッセイから亡くなる前年1993年

 

までの充実しているエッセイの数々を収めている

 

本書。川崎長太郎氏に始まり、色川武大氏、井伏鱒二氏

 

まで、思い出を描き、偲んでいる。

 

お酒がお好きだったらしく、日本酒を飲むと肌が爛れるので、

 

ウイスキーを飲んだら、それがないので、生前井伏氏に教えた

 

とある。すごくデリケートな人で良く気が付き、端々に神経の

 

行く人と言う印象である。こういう人とはあまり会いたくない。

 

見透かされそうで、ちょっと怖いからである。編集者としても、

 

奮っていて、先日、「奇妙な味の小説」がとても良かったので、

 

本書を買って読んでみたというわけ。

 

(読了日 2024年10・17(木)18:50)

                (鶴岡 卓哉)

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陰翳礼賛  文・谷崎潤一郎 写真・大川裕弘

2024-11-13 05:20:34 | 本の紹介

PIE 2010年

 

日本人にとっての暗さ、陰、と云うものの重要さ

 

を説いた一冊。全国の店などで撮られた気配の

 

ある写真がたくさん載っている。

 

いや、この本を読めば、日本人に生まれたことの

 

意味について考えざるを得ないだろう。

 

それは谷崎氏の好きだった日本女性のことを考える

 

ことにもある。元来、日本人の女性はうす暗いところに

 

そそとしているのが美しい、とある。

 

今の時代、うす暗い陰にいろ、と言ったら、女性は

 

怒り出すだろう。都合のいい美の追求でもある。男の

 

強かった時代の幻だ。

 

今の時代、美しさというものの意味も変わり、美しい

 

より、かわいい、が重宝される。

 

ぼくは夜が好きで、暗いのが好きなので、そこに美

 

を求める谷崎氏に共感しかなかった。人の性格でも、

 

暗いのもなかなか今の時代、いいと思うのだ。

 

暗さの中にこそ美があるだろう。やたらめったら明るい

 

と云う人というのもなかなか厄介なものである。

 

(読了日 2024年10・14(月)22:45)

                 (鶴岡 卓哉)

 

 

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思い出の作家たち 司馬遼太郎 ドナルド・キーン

2024-11-11 05:16:11 | 本の紹介

松宮史朗・訳 新潮文庫 平成十七年

 

今回の本書の大トリとなる司馬遼太郎氏をみてゆこう。

 

キーン氏と司馬氏は友好的な関係だったらしく、ある

 

パーティーでの司馬氏の口から出た言葉によって、朝日新

 

聞に採用されたという。

 

また、キーン氏は司馬氏の文章は褒めていないね。

 

非日本人に理解されないのはその文体にある、と分析

 

している。

 

反復する文章にも苦言を呈しているように感じる、

 

と同時に司馬氏の人間性についてはぶっち切りで褒めて

 

いる。あの人間性あっての司馬文学だ、といっている。

 

キーン氏の「日本人になりたい」発言はいまだに日本人の

 

語り草だが、ぼくは、キーン氏は日本を理解した立派な

 

日本人だ、と認めてあげたい気持ちになっている。

 

(読了日 2024年10・13(日)22:24)

                (鶴岡 卓哉)

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思い出の作家たち 阿部公房 ドナルド・キーン

2024-11-09 02:02:27 | 本の紹介

松宮史朗・訳 新潮文庫 平成17年

 

今回は阿部公房氏を見て行こう。キーン氏と阿部氏の

 

初めての出会いは、一九六四(昭和三十九)年の秋。

 

「砂の女」の英訳本出版に当たって、ニューヨークに

 

安部氏が来ていて、コロンビア大学のキーン氏

 

の研究室を訪れ、この年、カンヌ映画祭の審査員特別賞を

 

獲った勅使河原宏氏が一緒だったという。そして、若い女

 

性がひとり通訳に伴って来ていたが、キーン氏は通訳なしで

 

喋ると言い、心外に感じたと云うことだ。

 

その女性は、なんとオノ・ヨーコ女史であったことを

 

 

数年後に知ることになる。

 

この時、三人を110丁目の中華料理屋にキーン氏は

 

案内したのだが、日本から戻ったばかりだったキーン氏

 

は時差ボケが抜けず、様子がヘンだったらしいのを

 

医学部出身の阿部氏は麻薬常習者と勘違いし、確信し、

 

それがのちの交際に暗い影を落とすことになるが、ある

 

酒席で誤解もすんなり解けて、無二の友人となった

 

という。その後、阿部氏は戯曲などを手掛けるが、

 

1993年に亡くなった、癌だったと云う。

 

(読了日 2024年10・11(金)21:55)

                (鶴岡 卓哉)

 

 

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思い出の作家たち 三島由紀夫 ドナルド・キーン

2024-11-08 04:19:53 | 本の紹介

松宮史朗・訳 新潮文庫 平成17年

 

今回は三島由紀夫氏 をみてゆこう。ぼくは三十代の頃、

 

「葉隠入門」を座右の書として、ボロボロになってしま

 

うまで読み倒したほどだが、四十代になって、不意

 

に考えが変わり、ほっぽり出してしまった。

 

三島氏は夭折にすごい憧憬の念を抱いていたようだ。

 

若くして死ぬことを美と考えていたようだ。そこら辺が

 

ぼくと違うところだった。ぼくは長生きしたいと、

 

痛切に願うようになっていった。美に生きた三島氏

 

ならではの切腹と云う儀式をどう解釈するか? もう

 

書けなくなったからだ、とする大方の見解に、切腹

 

する前日まで「豊饒の海」を書いていた、と書き、

 

そうではなかったのでは、と暗に言っている。

 

自身美を追求する余り、夭折の道を突き進んだ三島。

 

金閣寺を燃やした青年と話したが、附け加えることは

 

なかった、と語った。美とは、人を惹き付けてやまない

 

究極の現代人のテーマだ。

 

(読了日 2024年10・8(火)23:15)

                (鶴岡 卓哉)

 

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ストレンジャー・ザン・ニューヨーク 四方田犬彦 写真・北島敬三

2024-11-06 00:40:10 | 本の紹介

朝日新聞社 1988年

 

いつもは上がらずに済ませてしまうが、2階に

 

上がって、芸能のコーナーのこの本をアカデミイ

 

で手にし、冒頭、ストレンジャー・ザン・パラダ

 

イス、ジム・ジャームッシュ監督の映画に言及し

 

ている文章があり、買うことに即決。ニューヨークは

 

行ったこともあり、大好きな街だ。

 

ぼくは田舎より、街を歩いている方がイキイキして

 

いるらしい。この本も都会的でアーティスティックで

 

アカデミックな本だった。まだ、ニューヨークの

 

物価が東京の八割程だった頃のみんな若い頃の話だ。

 

今はラーメン一杯数千円するというから、驚きだ。

 

四方田氏も今や、71歳の御大だ。

 

ニューヨークを立つ時、朝の三時まで、送別会をやられ

 

ていたそうだ。うーん、楽しそうだ。

 

ぼくは、もう、あんまりどんちゃん騒ぎもしたくない

 

のね。

 

ひとり静かに、ストレンジャー・ザン・ニューヨークを

 

読んでいる方が楽しいひとになってしまったのだった。

 

(読了日 2024年10・8(火)22:⒑)

              (鶴岡 卓哉)

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