俳優界の「トキワ荘」的作品
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本作、1996年作品ですが、2021年デジタルリマスター版とされたものを拝見しました。
手塚治虫をはじめとした日本を代表する漫画家たちが若き日々を過ごし、
東京都豊島区に実在した伝説的アパート「トキワ荘」の日常を描きます。
昭和30年代。
トキワ荘に住む手塚治虫のもとへ、各漫画雑誌の編集者たちが日々通い詰めています。
その向かいの部屋に住む漫画家・寺田ヒロオ(本木雅弘)は、
出版社へ持ち込みを続けています。
やがて、手塚治虫はトキワ荘を去りますが、
入れ替わりにやって来たのが「藤子不二雄」の2人。
引き続き、石ノ森章太郎、赤塚不二夫ら、若き漫画家の卵たちが入居。
寺田を中心に「新漫画党」を結成します。
この頃の漫画を懐かしく思う世代は、多分私あたりが最後なのでは?
今名前をあげたのはその後ますます活躍して、今も名高い方々ですが、
他にもつのだじろうさん、水野英子さんなども出てきて、これは本当に懐かしい。
石ノ森章太郎さんはいまだに私の中では「石森章太郎」さんです。
4畳半一間、トイレや台所は共用。
お風呂は銭湯へ。
作中、家賃は3000円と言っていたな。
昭和ですねえ・・・。
さて、夢を追う若い人たちが集まったトキワ荘ですが、
でも誰もが頂点まで上り詰めることができるわけではありません。
挫折し、去って行く者もいるわけで・・・。
そこで寺田ヒロオさんが本作の主人公になっているところに意味があります。
寺田ヒロオさんの漫画はあまりにも優しくきちんとしていて、
子どもたちの人気を集められなかった・・・。
ナンセンスなギャグや、派手で刺激的なストーリーとは無縁・・・。
良心的さが故に、時代の波に乗れなかったというべきなのか。
ところで、ほぼ30年前の本作の、出演俳優が興味深い。
当時でもすでに活躍して人気があった、きたろうさん、時任三郎さん、桃井かおりさん。
他に、古田新太さん、生瀬勝久さん、阿部サダヲさん・・・。
その若き日の姿を拝むことができます。
(当時どれだけの知名度を得ていたのか、よく分かりませんけれど・・・)
そしてまた、今の私は存じない方々・・・。
すなわち、本作は俳優界の「トキワ荘」であるのかも。
その後力を付けて売れっ子になっていく人たち。
夢かなわず、去って行った人たち・・・。
そんなことでも、見る価値のある作品だと思います。
「トキワ荘の青春」
1996年/日本/110分
監督:市川準
出演:本木雅弘、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、阿部サダヲ、さとうこうじ
青春度★★★★☆
昭和度★★★★★
満足度★★★★☆