映画と本の『たんぽぽ館』

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ドレスデン、運命の日

2007年07月16日 | 映画(た行)

愛をかけた運命の日。しかしそれはドレスデンの運命の日でもあった。

               * * * * * * * *

1945年、ドイツ。第二次世界大戦のドイツ敗退が色濃くなってきた頃です。
これまで、ほとんどの映画・小説などで、ドイツは敵国・侵略側として、描かれていました。
けれど、あれだけ支配範囲を広め勢力を誇っていたものが、次第に形勢逆転、降伏にいたるまでには、どれだけの犠牲を払わねばならなかったのか・・・、そのようなことをあまり意識したことがなかったように思います。
ドイツも、世界に向けて、そのことは言いにくかったということもあるのでしょう。
60年を経て、ようやくドイツも自らの痛みを発信できるようになったといえるかもしれません。
あの頃の多くの国同様、ドイツでもまた、ごく普通に生活をしている人々がいて、家族や恋人を案じながら戦地へおくりだしていた。
そして、他の国同様に空襲を受け、たくさんの犠牲者と瓦礫の街が残った。
未だなお、戦争映画が作られ続けるのは、そのような痛みを多くの国が持っていて、そして、もう繰り返したくないと思っているからなのでしょう。
そういう私も、むろん戦争体験者ではなく、テレビや映画で聞き及んでいるだけではありますが、世界中で殺戮が公然と行われていた、そのような狂気の時代を繰り返したくないものだと思います。
残念ながら、戦争というよりはテロという形で、一般の人たちが命を落とすことも多い現在ですが。

さて話はもどって、このドイツのドレスデンという都市はドイツ一の文化と芸術を誇るフィレンツェにもたとえられる街。
その街が1945年2月13日の空襲で一夜にして廃墟となりました。
この映画は、そこで生活する看護師のアンナ、その婚約者である医師のアレクサンダー、そして、戦闘機が墜落しこの都市に降り立ってしまった、イギリス兵のロバートの3人が中心にストーリーが進みます。
つまりは三角関係という、これも永遠のテーマではあります。
学者肌というのでしょうか、まじめで神経質、ロマンチックには欠ける婚約者のアレクサンダー。
対して、ちょっと自由で野生的、しかも怪我をして孤立無援という、乙女心を掻き立てる要素満載のロバートなので、悪いけれど勝負はついてましたねえ・・・。
終盤、この三人がやむなく連れ立って火の中を逃げ歩くシーン。
ここはなかなかいいシーンでした。
それから、防空壕の中で、おびえている女の子に影絵をしてみせるアレクサンダー。
結構いいところあるじゃん。
単に敵役だけにならない、このような設定もちょっとしゃれていると思います。

本当はこの二人は手に手をとって駆け落ちするつもりだったと思いますが、辛くも命拾いをし、廃墟と化した街を見て、呆然とする二人。
その時すでに、ロバートは、もう彼女がついてこないことを悟っている。
アンナは、この廃墟の街を見捨てて出て行くことはできない。
生き残ったものはこの街の復興に尽くさなければならないという思い。
そのようなセリフは全く出てきませんでしたが、とてもよく伝わりました。

空襲の恐ろしさ、戦争の悲惨さに、ラブストーリーをも重ね、万国幅広い層に訴える力を持った作品だと思います。

2006年/ドイツ/150分
監督 ローランド・ズゾ・リヒター
出演 フェリシタス・ヴォール、ジョン・ライト、ベンヤミン・サドラー

「ドレスデン、運命の日」公式サイト