映画と本の『たんぽぽ館』

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「山本覚馬 知られざる幕末維新の先覚者」 安藤優一郎

2013年05月13日 | 本(その他)
おのれの道に忠実に

山本覚馬(かくま) 知られざる幕末維新の先覚者 (PHP文庫)
安藤 優一郎
PHP研究所



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維新のリーダーというと西郷・高杉・龍馬など、勝者側ばかりが注目されてきた。
しかし、敗れた会津藩にも明治維新に大きく貢献した人物がいた、
山本覚馬である。
「日本の独立が危うい時に、国内で相争っている場合ではない」と、
薩長との融和の道を探り、維新後は京都の近代化と同志社大学の設立に奔走。
激動の時代を生き抜いた覚馬の生涯から、
もう一つの幕末維新史を描く。


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さて、秋月悌次郎に引き続き、
同じ会津藩士・山本覚馬の出番です。
NHK大河ドラマを見ている方には、今更の話ですが、
「八重の桜」主人公・八重のお兄さんですね。
私は、TVドラマだから、一藩士に過ぎない山本覚馬にも注目し、
西郷隆盛など、著名人と会って話をするシーンがあるのかな?と思っていたのです。
でも彼は江戸の昌平坂学問所で学んだ時に
諸藩の将来の中心人物たちと出会い、面識ができたりしていたのです。
だから実際に諸藩からも一目置かれる人物であったらしい。
つまりは八重の桜は、本当は山本覚馬の物語であると言ってもいい。


現時点でのTVドラマからすると、ややネタばらしになることをお許し下さい。
でも実在の人物なので、ちょっと調べればわかることですので・・・。


会津藩が京を後にして、会津のお城に立てこもる戊辰戦争の渦中にも、
覚馬は京にとどまります。
というのも、その頃はすでに失明してしまっていたので。
更には脊髄を痛めて足腰立たなくなっていたということです。
会津降伏後、1年以上長州藩に監禁されていたといいますが、
扱いはさほど過酷ではなかったようです。
その後覚馬は、八重たち家族を京へ呼び寄せ、京を生涯の住処とする。
つまり、ドラマにもあった、会津を去って京へ上るというシーン、
それが本当に彼にとっては、最後の故郷の見納めであったわけですね・・・。
盲目で、出歩くことも困難ながら、
京都の近代化や同志社大学の設立のために尽くしたという山本覚馬。
八重はひたすら兄を支えるために行動したのではないかと思われます。
西島秀俊さんが、この山本覚馬をどんなふうに演じていくのか、
今後も楽しみな所でもあります。


それにしても、これまでほとんど注目されなかった人物が
スポットを浴びるというのも悪くはありません。
これぞ歴史の醍醐味。
ご本人はきっとお墓の中で苦笑しているでしょうけれど。
山本覚馬の出発点は、やはり江戸で学問を積んだことだと思うのです。
そこで様々な知識を得、己だけでなく日本の進むべき道をもイメージしたでありましょう。
学ぶことは大切なんだなあ・・・。


「山本覚馬 知られざる幕末維新の先覚者」安藤優一郎 PHP研究所 Kindle版にて

満足度★★★☆☆