悲しい恋の終わりは音楽の終わり。そしてまた・・・

* * * * * * * * *
マルジャン・サトラピによるコミックを
ご本人が監督し映画化したもの。
・・・といっても、私にも馴染みはないのですが、
寓話風にストーリーが進み、
軽いタッチではありますが、実は大変深い内容を持っています。
テヘランが舞台ですが、フランス作品。
ああ、そういえば「アメリ」の映像の雰囲気に似ているかもしれません。
でも主役は、キュートな女の子ではなくて、オジサン。
ナセル・アリ(マチュー・アマルリック)は、プロのバイオリン奏者です。
ところが、とても大事にしていたバイオリンを壊されてしまい、
代わりのものでは全然満足出来ません。
もうこれまでのように演奏はできない。
絶望した彼は死を決意し、ベッドに横たわったまま食事を取らず、8日間を過ごします。
彼はその有り余る時間で、
これまでの人生、かなわなかった愛を振り返るのです。

彼は若かりし頃、音楽の師匠に
「おまえは技術は完璧だが、おまえの音はクソだ」と言われます。
それから彼は恋をし、その恋が破れたとき、
それと引き換えのように世にも美しい音を得るのです。

彼の音楽は、悲しい恋、別れた恋人の面影を追うことで成り立っていたわけです。
それで、この作品をよくよく振り返ってみれば、
彼がバイオリンを弾けなくなったのは、
バイオリンが壊れたからではないのだということがわかりますね。
実に悲しい人生ではありませんか。
その人への思いが深いばかりに、
妻を愛せず、妻の本当の気持ちにも気づかず・・・。
子どもたちへの愛すらもおざなりだ。
彼の奏でる音は、そういうものを犠牲にして成り立っていて、
彼はただその音のために生きいたというわけです。

ナセル・アリが、どのように自殺すべきか想像するシーンがあって、
痛そうなのは嫌だし・・・などと、結構ユーモラスなシーン。
だから自殺というのも、ジョーダンなのでしょう、
とその時は思ってしまいました。
けれど、音を失くした彼はもう生きている意味がないのです。
当然の帰結でした。
結局、このとぼけたオジサンは、非常に純粋なのでした・・・。
凡人は、愛だの恋だのよりも、日々の生活が先で、
無粋にも生き続けてしまいますものねえ・・・。
芸術家というのはそうしたものなのかもしれません。
「チキンとプラム あるバイオリン弾き 最後の夢」
2011年/フランス・ドイツ・ベルギー/92分
監督:マルジャン・サトラピ、バンサン・パロノー
原作:マルジャン・サトラピ
出演:マチュー・アマルリック、マリア・デ・メディロス、イザベラ・ロッセリーニ、ゴルシフテ・ファラハニ
ファンタジックさ★★★★☆
人生の悲哀★★★★★
満足度★★★★☆

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マルジャン・サトラピによるコミックを
ご本人が監督し映画化したもの。
・・・といっても、私にも馴染みはないのですが、
寓話風にストーリーが進み、
軽いタッチではありますが、実は大変深い内容を持っています。
テヘランが舞台ですが、フランス作品。
ああ、そういえば「アメリ」の映像の雰囲気に似ているかもしれません。
でも主役は、キュートな女の子ではなくて、オジサン。
ナセル・アリ(マチュー・アマルリック)は、プロのバイオリン奏者です。
ところが、とても大事にしていたバイオリンを壊されてしまい、
代わりのものでは全然満足出来ません。
もうこれまでのように演奏はできない。
絶望した彼は死を決意し、ベッドに横たわったまま食事を取らず、8日間を過ごします。
彼はその有り余る時間で、
これまでの人生、かなわなかった愛を振り返るのです。

彼は若かりし頃、音楽の師匠に
「おまえは技術は完璧だが、おまえの音はクソだ」と言われます。
それから彼は恋をし、その恋が破れたとき、
それと引き換えのように世にも美しい音を得るのです。

彼の音楽は、悲しい恋、別れた恋人の面影を追うことで成り立っていたわけです。
それで、この作品をよくよく振り返ってみれば、
彼がバイオリンを弾けなくなったのは、
バイオリンが壊れたからではないのだということがわかりますね。
実に悲しい人生ではありませんか。
その人への思いが深いばかりに、
妻を愛せず、妻の本当の気持ちにも気づかず・・・。
子どもたちへの愛すらもおざなりだ。
彼の奏でる音は、そういうものを犠牲にして成り立っていて、
彼はただその音のために生きいたというわけです。

ナセル・アリが、どのように自殺すべきか想像するシーンがあって、
痛そうなのは嫌だし・・・などと、結構ユーモラスなシーン。
だから自殺というのも、ジョーダンなのでしょう、
とその時は思ってしまいました。
けれど、音を失くした彼はもう生きている意味がないのです。
当然の帰結でした。
結局、このとぼけたオジサンは、非常に純粋なのでした・・・。
凡人は、愛だの恋だのよりも、日々の生活が先で、
無粋にも生き続けてしまいますものねえ・・・。
芸術家というのはそうしたものなのかもしれません。
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マチュー・アマルリック,マリア・デ・メディロス,イザベラ・ロッセリーニ,キアラ・マストロヤンニ,ゴルシフテ・ファラハニ | |
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「チキンとプラム あるバイオリン弾き 最後の夢」
2011年/フランス・ドイツ・ベルギー/92分
監督:マルジャン・サトラピ、バンサン・パロノー
原作:マルジャン・サトラピ
出演:マチュー・アマルリック、マリア・デ・メディロス、イザベラ・ロッセリーニ、ゴルシフテ・ファラハニ
ファンタジックさ★★★★☆
人生の悲哀★★★★★
満足度★★★★☆