映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

蛇の人

2013年05月24日 | 西島秀俊
人の心の奥底に潜む“蛇”



            * * * * * * * * *

これは、第2回WOWOWシナリオ大賞の脚本によるもの、ということですね。
なるほど、なかなか奥深い作品になっていると思いました。


部長の自殺と同時に失踪した、課長・今西(西島秀俊)。
彼は、有能で、人当たりがよくて、誰からも信頼されていた・・・
いつも今西について仕事をしていたOLの陽子(永作博美)が、
彼の行方を探すように重役から命じられます。
僅かな手がかりから、彼の友人をたぐっていくと・・・
よく知っていたはずの今西の別の顔が見えてくるんだね・・・。


ちょっと行き詰まったり、人生の岐路に立っている人に向かって、
今西は弁舌爽やかに、ある方向への後押しをする。
それがその時はとても説得力があるんだね。
だけど、その言葉に従った人たちは、みななんだか不幸になっているように思えちゃう。
そして更に調べていくと、思いがけない今西の過去にたどり着くんだ。



陽子は思ってしまうんだよね。
今西は頭の良い人だ・・・。
わざと人の心を操るようにして、誤った道に人を導いているのではないかと・・・。
ここでの西島氏はなんと関西弁。
う~ん、これはさすがに違和感あったんだけど・・・。
でもさ、あえて柔らかい人物味を出そうということで・・・
シナリオ上の計算なのか、今西の計算なのかどっちだろ?
う~ん、どっちなんだろう・・・。
でも、いわれてみれば、今西は面白そうな話をしている時も、
ちっとも笑ってなかったよね。
信頼出来る有能な人・・・と思っていたのが、
次第次第に印象を変え、底知れない不気味さを感じさせ始めるというのが、すごい!
それで、いつも彼の身近にいた人がターゲットになっていると陽子は気づくんだね。
いちばん最近、彼の身近にいるのは、自分自身だ。
一体彼のどこに私への罠があったのか?
愕然とする陽子。
しかし、それが今西の居所のヒントになるわけだよね。
いや、さすがシナリオ大賞。
こういうところの運びがすごくいいと思うな。
人の心の奥底には蛇が潜んでいる・・・。
でもそれは今西に限ったことではない。
どんな人であっても・・・、ということなんだな。
本当に今西には悪気があったのか。
その時は本当に相手のことを思っていたのではないか。
結局答えは出ていないんだよね。
そんなところも、余韻を残してよかったと思う。


・・・けど、満足度はが高くないのはなぜ?
う~ん、そこがよくわかんないんだけどね・・・。
パンチ不足・・・?
いや十分ショッキングな場面はあったと思うんだけど。
今西の過去というのが、あまりにも私たちの身近なところから離れている、
っていうあたりじゃないかなあ・・・。
いくらなんでも唐突過ぎる感じ・・・。
そこは師弟関係があればいいわけだから・・・、
何かもっと身近でわかりやすい設定があったかもしれないね。
う~ん、ちょっと残念。

蛇のひと [DVD]
永作博美,西島秀俊,板尾創路,劇団ひとり
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


2010年/日本
監督:森淳一
脚本:三好晶子
出演:永作博美、西島秀俊、板尾創路、劇団ひとり、田中圭

シナリオ★★★★☆
西島秀俊の魅力度★★★☆☆
満足度★★★☆☆