確率論から歴史を解く
* * * * * * * * * *
永禄3(1560)年、京の街角で三人の男が出会った。
食い詰めた兵法者・新九郎。
辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。
そして十兵衛
…名家の出ながら落魄し、その再起を図ろうとする明智光秀その人であった。
この小さな出逢いが、その後の歴史の大きな流れを形作ってゆく。
光秀はなぜ織田信長に破格の待遇で取り立てられ、
瞬く間に軍団随一の武将となり得たのか。
彼の青春と光芒を高らかなリズムで刻み、
乱世の本質を鮮やかに焙り出す新感覚の歴史小説!!
* * * * * * * * * *
垣根涼介さんが、歴史小説?
意外性とともに期待が高まります。
信長でも秀吉でもなくて、光秀というところがミソですね。
信長にあんなに目をかけられていながらも、
あえて裏切り、そして破滅の道をたどった光秀の行動の謎。
本作はそれを読みとくのが本題のストーリーではありませんが、
若き日の光秀を描き、晩年の彼の行動の謎をもちょっぴり探ろうとしているので、
そういうところに興味がある方が読んでも面白いと思います。
さて、「定理」と来たら、実は私には苦手な分野なのですが、
本作には「確率論」が出てきます。
光秀が、名家の出ながら不遇な浪人の若いころ、
二人の人物と出会います。
食い詰めた兵法者の新九郎と、
辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。
この愚息のする辻博打。
4つの碗が伏せてあって、その内の一つに石が入っている。
どれに入っているかを当てさせるという賭けなのですが、
その手順にそって考えていくと、石の入っている方を当てる確率は2分の1と思えるのに、
繰り返していくうちに何故か愚息が勝つほうが圧倒的に多い。
それはなぜなのか・・・?
光秀が信長にその才能を認められたある合戦の勝敗が、
この確率論に基づいたものだった、という大胆なストーリーです。
その論については、数学の苦手な私にとって完璧に理解したとは言いがたいのですが、
例えば100個の碗だったらどうなのか、
と言われた時にはおぼろげながらわかった気がしました。
不思議な感じがしますが・・・
などという私は完璧にダマされる側ですね・・・。
権力に寄り添わず自由に生きようとする新九郎・愚息と道は違えるのですが、
光秀は彼らに親しみを感じ、認めながらも、
自分の進むべき道を歩んでゆく。
本作では肝心の本能寺の変のあたりはすっ飛ばされて、
それからおよそ15年を経て、
新九郎と愚息が当時の光秀の心境を推し量ります。
ふむ、つまりはその後の日本のために、この謀反は必要なことだったと・・・。
色々と興味は尽きません。
非常に楽しく読みました。
「光秀の定理(レンマ)」垣根涼介 角川書店
満足度★★★★☆
光秀の定理 (角川書店単行本) | |
垣根 涼介 | |
KADOKAWA / 角川書店 |
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永禄3(1560)年、京の街角で三人の男が出会った。
食い詰めた兵法者・新九郎。
辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。
そして十兵衛
…名家の出ながら落魄し、その再起を図ろうとする明智光秀その人であった。
この小さな出逢いが、その後の歴史の大きな流れを形作ってゆく。
光秀はなぜ織田信長に破格の待遇で取り立てられ、
瞬く間に軍団随一の武将となり得たのか。
彼の青春と光芒を高らかなリズムで刻み、
乱世の本質を鮮やかに焙り出す新感覚の歴史小説!!
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垣根涼介さんが、歴史小説?
意外性とともに期待が高まります。
信長でも秀吉でもなくて、光秀というところがミソですね。
信長にあんなに目をかけられていながらも、
あえて裏切り、そして破滅の道をたどった光秀の行動の謎。
本作はそれを読みとくのが本題のストーリーではありませんが、
若き日の光秀を描き、晩年の彼の行動の謎をもちょっぴり探ろうとしているので、
そういうところに興味がある方が読んでも面白いと思います。
さて、「定理」と来たら、実は私には苦手な分野なのですが、
本作には「確率論」が出てきます。
光秀が、名家の出ながら不遇な浪人の若いころ、
二人の人物と出会います。
食い詰めた兵法者の新九郎と、
辻博打を生業とする謎の坊主・愚息。
この愚息のする辻博打。
4つの碗が伏せてあって、その内の一つに石が入っている。
どれに入っているかを当てさせるという賭けなのですが、
その手順にそって考えていくと、石の入っている方を当てる確率は2分の1と思えるのに、
繰り返していくうちに何故か愚息が勝つほうが圧倒的に多い。
それはなぜなのか・・・?
光秀が信長にその才能を認められたある合戦の勝敗が、
この確率論に基づいたものだった、という大胆なストーリーです。
その論については、数学の苦手な私にとって完璧に理解したとは言いがたいのですが、
例えば100個の碗だったらどうなのか、
と言われた時にはおぼろげながらわかった気がしました。
不思議な感じがしますが・・・
などという私は完璧にダマされる側ですね・・・。
権力に寄り添わず自由に生きようとする新九郎・愚息と道は違えるのですが、
光秀は彼らに親しみを感じ、認めながらも、
自分の進むべき道を歩んでゆく。
本作では肝心の本能寺の変のあたりはすっ飛ばされて、
それからおよそ15年を経て、
新九郎と愚息が当時の光秀の心境を推し量ります。
ふむ、つまりはその後の日本のために、この謀反は必要なことだったと・・・。
色々と興味は尽きません。
非常に楽しく読みました。
「光秀の定理(レンマ)」垣根涼介 角川書店
満足度★★★★☆