映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

靴職人と魔法のミシン

2015年07月08日 | 映画(か行)
ニューヨークの下町に息づく歴史



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本作、ファンタジックなお話かと思えば、
まあ、魔法のミシンなのでそういう向きもありますが、
なかなかステキなコメディでもありました。
いや、そうも言っていられないハードボイルドの展開もあるのですが。



ニューヨーク、マンハッタンのロウアー・イーストサイド。
マックス・シムキン(アダム・サンドラー)は、代々続く小さな靴修理店を営んでいます。
年老いた母親と二人暮らし。
毎日が単調でパッとしないと自分では思っている。
そんなある日、仕事で使っている電動ミシンが故障。
そこでやむなく物置の奥で眠っていた先祖伝来の旧式ミシンで靴を修理しました。
ところが、それこそが魔法のミシン。
そのミシンで修理した靴を履くと、
なんとその靴の持ち主そっくりに変身することができるのです!!
マックスはいろいろな人の靴を履いて、未知の人生を楽しんでみます。
なんだか毎日が面白くなってきた。
とうの昔に家を出たきりの父親になりすまし、
お母さんを喜ばせてみたりもするのですが・・・。
やがて、危険な事件にも巻き込まれていく・・・。



ニューヨークはいかにも新しく近代的な街、というイメージですが、
マックスの靴修理店ももう4代目。
いい感じに歴史を感じさせます。
人々の生活が感じられて、なんだかぬくもりのある下町の光景。
でもこの辺りは再開発のために地上げ屋が横行。
古いビルの住人を追い出しにかかる嫌がらせがあったりします。
効率ばかりが優先の新しいビル、新しい町並み。
そうではなくて、これまでニューヨークの片隅に生き続けた古いものも大切にしていきたい・・・、
そうした思いが、この物語のテーマの一つです。



そしてもうひとつは、父と息子。
マックスは家族を捨てて出て行ってしまった父(ダスティン・ホフマン)を憎んでいたのですが、
いない相手には文句も言えません。
だから通常の「父と息子の相克」というのとはちょっと違います。
でもそんな父でも、母は戻ってくるのを心待ちにしていたのですね・・・。
父の靴を履いて、父の姿で母親とゆったりとダンス。
ステキなシーンでした。

でもお隣の床屋のご主人(スティーブ・ブシェミ)が、
何かとマックスを気にかけて、まるでお父さんみたいと思ったのですが・・・!!
このストーリーにはさらなる秘密が隠されていますので、
油断できません!!



それから、本作いろいろな俳優さんたちの腕の見せどころといいますか、
例えばマックスがご近所のイケメンくんの靴をはいてみる。
見事にイケメンに変身したマックスなのですが、
どこか自信なさげで情けない感じ。
いかにも本人でなくて、「変身したマックス」に見えるところがすごいと思いました。
演技の幅が試されますねえ・・・。


「靴職人と魔法のミシン」
2014年/アメリカ/98分
監督:トーマス・マッカーシー
出演:アダム・サンドラー、ダスティン・ホフマン、スティーブ・ブシェミ、メソッド・マン、エレン・バーキン、ダン・スティーブンス

ニューヨークの下町度★★★★★
満足度★★★★☆