映画と本の『たんぽぽ館』

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「ジャイロスコープ」伊坂幸太郎

2015年07月20日 | 本(その他)
ジャンルにとらわれない伊坂ワールド

ジャイロスコープ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社


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助言あります。
スーパーの駐車場にて"相談屋"を営む稲垣さんの下で働くことになった浜田青年。
人々のささいな相談事が、驚愕の結末に繋がる「浜田青年ホントスカ」。
バスジャック事件の"もし、あの時…"を描く「if」。
謎の生物が暴れる野心作「ギア」。
洒脱な会話、軽快な文体、
そして独特のユーモアが詰まった七つの伊坂ワールド。
書下ろし短編「後ろの声がうるさい」収録。


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伊坂幸太郎さんの短篇集です。
先に読んだエッセイ集「3652」の中に、短編が特別編集として加えられていて、
「うわ、短編も面白い!!」と思ったものですから、
この本を手にしました。

冒頭「浜田青年ホントスカ」は、伊坂氏らしい伏線に唸らされる一作。
妙だ。
だけれど、すごい。


「ギア」は近未来SFめいたストーリー。
一匹見かけたら10匹。
2匹見かけたら20匹かならずいる、という"セミンゴ"の謎。
きゃー、怖い。


「彗星さんたち」は、新幹線の車内清掃をする人たちのストーリー。
これが始めのうち全く「お仕事小説」ふうで、
あれ?と思うのです。
知らなければ、伊坂幸太郎さんだとは気づかないと思います。
こんなストーリーも書くのか・・・と思い始めたころ、
しかし終盤にかかって意外な展開。
それは全く「想像上」の話なのですが、それにしても面白い。
通常を生きる私達にもこんなイマジネーションは大事だなあ
・・・などと思います。


ラスト「後ろの声がうるさい」は、
本巻のための描きおろし短編なのですが、
本巻に収められている短編を拾い上げ一つのストーリーになっているという離れ業の一作。
これがまた最後まで読むと心がほんわかする一作でもアリ、お得です。


伊坂幸太郎ファン、必読の一作。


「ジャイロスコープ」伊坂幸太郎 新潮文庫
満足度★★★★☆