映画と本の『たんぽぽ館』

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Dearダニー 君へのうた

2016年06月01日 | 映画(た行)
数十年遅れて届いたジョン・レノンの手紙



* * * * * * * * * *

ジョン・レノンが新人ミュージシャンに宛てた一通の手紙が、
数十年の時を経て本人の手に渡った、
という実話をベースにしたストーリーです。
このミュージシャン、ダニー・コリンズにアル・パチーノというのが
なんとも粋な起用であります。



今やベテランミュージシャンであるダニー・コリンズ(アル・パチーノ)。
しかしもう何年も作曲も作詞もしておらず、過去のヒット曲を使うばかり。
それでもツアーは大入り。
もっともお客も殆ど往年のファンで、年輩の女性が大多数。
先日見た「グランドフィナーレ」を思い出してしまいました。
このダニーもまた、「過去の栄光」によって今現在の名声と富をつないでいるのです。
だから生活は豊か。
だけれどもどこか虚しさを隠すことができない・・・。



さて、そんな彼のもとに、
数十年前にジョン・レノンがダニーに宛てた手紙が発見され、届くのです。
というのも、その数十年前、ダニーはある雑誌のインタビューで、
ジョン・レノンを尊敬していること、
そして今後自分の曲がもっとヒットして
富と名声を得ることになるのが「怖い」ということを話しました。
それを読んだジョン・レノンが、ダニーに宛てて手紙を書いたのです。
しかしジョニー本人にではなく、雑誌の編集部宛てに送ったので、
本人には渡らず終いになってしまっていたのだとか。
ジョン・レノンはその手紙で
「金持ちになっても有名になっても、それは自分次第。
電話をくれれば相談にのるよ・・・」
と言っています。
なんて泣きそうなくらい大きくてステキな人物・・・
さすがジョン・レノンです。



さて、今になって敬愛するジョン・レノンのメッセージを受け取ったダニー。
酒と女と薬に溺れ、自らの音楽を追求することも忘れてしまった
今の自分に気づき愕然とします。
彼は突然ツアーを打ち切り、
これまで一度も会ったことがない自分の「息子」に会いに行くのです。
妻と娘と共につつましく暮らしている息子・トムは、
生まれた時から会いにも来ない実の「父」を憎んでおり、当然拒絶。
ダニーは、なんとかこの関係を修復したいと努力し、
そしてまた、何十年かぶりに曲を作り始めるのですが・・・



思うようにハッピーエンドとはならないところがまた、
なかなか味があります。
確かに、ジョン・レノンの言葉は彼には響いたのですが、
何十年も身についてしまった彼の生き方は、そう簡単には路線変更できないということか。
だけれども、それはそれで彼が歩んできた道。
それを全否定する必要もないのではないかと、優しく語っているような気がします。
本作中で使われている曲はどれも私にも馴染みのある懐かしい曲ばかり。
「グランドフィナーレ」よりはうんとカッコ悪いのですが、
でも私はこの方が好きです。



Dearダニー 君へのうた [DVD]
アル・パチーノ,アネット・ベニング,ジェニファー・ガーナー,クリストファー・プラマー
KADOKAWA / 角川書店


「Dearダニー 君へのうた」
2015年/アメリカ/107分
監督:ダン・フォーゲルマン
出演:アル・パチーノ、アネット・ベニング、ジェニファー・ガーナー、ボビー・カナベイル、クリストファー・プラマー
人生の見直し度★★★★☆
満足度★★★★☆