映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ロイヤル・ナイト 英国女王の秘密の外出

2016年06月26日 | 映画(ら行)
ロマコメの王道



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エリザベス女王が19才の王女時代、
非公式に一夜の外出が許されたという実話を元にしています。
そう、あの「ローマの休日」のようなストーリーですが、
これがまた、とてもロマンチックで面白い。



1945年5月8日。
6年続いた戦争が終わる、ヨーロッパ戦勝記念日。
英国王女、姉・エリザベス(サラ・ガドン)と妹・マーガレット(ベル・パウリー)は
お忍びでバッキンガム宮殿を後にし、
国を挙げてのお祝いでお祭り騒ぎの街に繰り出します。

ところが、付添人が目を離した隙に、マーガレットは見知らぬ男性とバスに乗って行ってしまう。
エリザベスもその後を追い、別のバスに乗り込みます。
しかし、バスに乗るのもはじめてで、お金も持ち合わせていない。
たまたま同じバスに乗り合わせたジャック(ジャック・レイナー)という青年が
彼女にバス代を差し出しますが・・・。
もちろん彼は彼女が王女であることは知りません。
エリザベスに請われるまま、二人はマーガレットを探し、
どんちゃん騒ぎの街を歩き回ることに・・・。



王女様がお忍びで出かける一夜のほのかな恋。
なんだか自分がおばちゃんであることもしばし忘れて、
少女趣味のロマンティックに浸りました。
これは「英国王のスピーチ」で描かれた王室の6年後。
この夜もエリザベスの父であるジョージ6世が、国民に向けてラジオの生放送で語りかけるのです。
王がスピーチを苦手なことは家族もわかっていて、
だからこの夜のスピーチのこともちょっと心配のようでした。
エリザベスは、下町の酒場でジャックとともに父王のスピーチを聞くことになります。
こんなことも知っているといないとでは、興味の持ちようが変わりますね。


ジャックは空軍兵ですが、実は隊を脱走してきていたのです。
エリザベスも窮屈で自由にならない身の上から逃げ出してきている。
そんな二人がいつしか共感を覚え惹かれていくという設定がいいですね。
しかし、二人とも自分がいるべきところに戻らなければならないことはよくわかっている。
その上で
「二人でこのままパリに行こう。
エッフェル塔やモンマルトルや・・・。
二人ならなんとかやっていけるよ・・・」
しばし夢を語るこのシーンがなんとも切なく素敵でした。


戦争が終わったことで街は浮かれているけども、
この戦争で命を失った人や空襲で家を破壊された人、
多くの貧しい人々・・・
そういう現実をもエリザベスは実際に自分の目で見るわけです。
押さえるべきところもちゃんと押さえてありますね。
特に女性にはおススメです。

「ロイヤル・ナイト」
2015年/イギリス/97分
監督:ジュリアン・ジャロルド
出演:サラ・ガドン、ベル・パウリー、エミリー・ワトソン、ルパート・エベレット、ジャック・レイナー