満身創痍、死に物狂いの戦いに、ほとんど泣きそう。
村上海賊の娘 上巻 | |
和田 竜 | |
新潮社 |
村上海賊の娘 下巻 | |
和田 竜 | |
新潮社 |
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和睦が崩れ、信長に攻め立てられる大坂本願寺。
海路からの支援を乞われた毛利は村上海賊に頼ろうとした。
その娘、景は海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女だった…。(上)
織田方の猛攻を雑賀衆の火縄が止め、
門徒の勢いを京より急襲した信長が粉砕する。
毛利・村上の水軍もついに難波海へ。
村上海賊は毛利も知らぬ禁じ手と秘術を携えていた…。
信長vs.本願寺、瀬戸内と難波の海賊ども…。
ケタちがいの陸海の戦い!
木津川合戦に基づく一大巨篇。(下)
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えーと、平成26年本屋大賞受賞作。
読みたいと思いながら、もう4年も経っていたなんて・・・。
まあおかげで、図書館予約も全く待機期間なしで、すぐに借りることができましたが。
時代的には、織田信長と大坂本願寺の対決のとき。
そこで、織田方に組みする泉州眞鍋海賊と、
本願寺に味方しようとする毛利方に組みする村上海賊、
この2つの海賊の凄まじい対戦のようすが描かれています。
この村上海賊首領の娘が景(きょう)。
しかし初めの方では意外にもただの強気な跳ね返り娘です。
"醜女"とありますが、それは当時の日本人の美意識からのこと。
大柄でホリが深くて大きな目。
異人を見ることの多い泉州の海賊たちには「べっぴん」と映る、というのがミソです。
宝塚の男役のイメージですね。
まあ容姿はともかく、登場したときの景は、
戦をただかっこいいものと思っていて、自分もそこで活躍したいと思っている。
年の頃二十歳ではありますが、全くわがままな子供のよう。
そんな彼女が、一向宗の老人や少年、海賊の男たちが
命をかけても守ろうとするものの意味を知り、真の大人になっていくのです。
そして一旦は「女らしく」船に乗ることもやめておとなしく嫁にでも行こうと思うのですが、
しかしそれでは物語が進まない。
やがて彼女は立ち上がり、壮絶な戦いの中に身を投じる事になります。
いやいや、その海戦のシーンがすごい迫力で胸が熱くなってしまいます。
男たち、特に眞鍋の七五三兵衛(しめのひょうえ)のキャラが強烈で、
ものすごい魅力を放っています。
その豪胆さ、生きる力。
その七五三兵衛と景が対決するところは、むろん力で景が勝てるわけもない。
すごく怖くて震えてきそうでした・・・。
満身創痍の景の死に物狂いの戦いに、ほとんど泣きそう・・・。
景の弟・景親(かげちか)は、いつも姉にいじめられて逃げ足だけは早い臆病者。
しかし、それでもやはり姉思いの彼は、
最後には大変身を遂げるというところがまた、痛快でしたね!
なるほど、本屋大賞も納得の力作。
遅ればせながら、読んで良かった!
図書館蔵書にて(単行本)
「村上海賊の娘 上・下」和田竜 新潮社
満足度★★★★★