映画と本の『たんぽぽ館』

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「冷蔵庫を抱きしめて」荻原浩

2018年06月26日 | 本(その他)

壁を乗り越えろ!

冷蔵庫を抱きしめて (新潮文庫)
荻原 浩
新潮社

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幸せなはずの新婚生活で摂食障害がぶり返した。
原因不明の病に、たった一人で向き合う直子を照らすのは(表題作)。
DV男から幼い娘を守るため、平凡な母親がボクサーに。
生きる力湧き上がる大人のスポ根小説(「ヒット・アンド・アウェイ」)。
短編小説の名手が、ありふれた日常に訪れる奇跡のような一瞬を描く。
名付けようのない苦しみを抱えた現代人の心を解き放つ、花も実もある8つのエール。

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荻原浩さんの短編集。
8篇が収められていますが、主人公は皆、何かの壁にぶつかっています。


表題「冷蔵庫を抱きしめて」は、新婚の直子。
こんなに気の合う人はいない!!と感じ、最高に幸せな結婚のハズでした・・・。
ところが、結婚して初めてわかった「食べること」についての意識の違い。
こんなことで将来ずっと一緒にやっていけるのだろうかと不安になった直子に、
以前苦しんだ摂食障害がぶり返します。
大量に買い込んだ食べ物が詰まった冷蔵庫を抱きしめるようにして、
一人悩める直子・・・。
結婚してから夫の理解不能なところを見出して悩んでしまう・・・。
それは何も食べ物のことでなくてもいいわけです。
はじめはどんなに幸せな結婚と思えても、期待はずれのところは多かれ少なかれかならずある。
人々はそれをどうにかこうにか乗り越えて行くか、
あるいは乗り越えることを諦めて結婚を解消するか・・・
つまりはそれこそがそれぞれの人生。
直子は乗り越えるにも乗り越えられず、
その苦しみが摂食障害という別なものへ転化していくのですね・・・。
けれど、意外にもステキなラストが待っていますよ。
そうなんです。
結婚は二人でするものなのだから、一人で悩んじゃダメなんですよ!!
ステキな読後感の1篇。

「ヒット・アンド・アウェイ」は、同居のDV男に悩む幸乃。
気に入らないことがあるとすぐに手を挙げる男に対して、
幸乃は前夫との間にできた娘を守るので精一杯。
そんな彼女が男を殴り返すことなどはとても無理と思いつつ、
とにかくストレス解消にはなるのではないかと思い、ボクシングジムに通い始めます。
しかし意外にも素質があったらしく、幸乃はどんどん力をつけていって・・・。
強い女性が好きな私は、本作、大好きです。
彼女がDVを受けていることに気づいて、密かに応援するジムの会長も良かった。


図書館蔵書にて(単行本)
「冷蔵庫を抱きしめて」荻原浩 新潮社
満足度★★★.5