「月がきれいですね。」
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風変わりなこの題名。
冒頭はこんなふうです。
結婚3年目(バツイチ)のじゅん(安田顕)が仕事から帰宅すると
妻のちえ(榮倉奈々)が血を流して倒れています。
じゅんは慌てて介抱し、救急車を呼ぼうとしますが・・・
血はケチャップでちえが死んだふりをしていただけなのでした。
このときじゅんがあわてて押したナンバーが117で、
スマホから流れる時報がなんとも白々しい・・・。
なんでこんなことをするのかとじゅんが聞いても妻はその訳を話しません。
そしてその後も毎日、ワニに食われたり、銃で撃たれたり、
妻は必ず死んだふりをして夫を迎えるのです。
じゅんはわけが分からず、悩んでしまいますが・・・。
こんな冒頭の後、彼らの出会いや結婚に至るまでのことが回想として少しずつ語られていきます。
また、本作ではこの二人と対応させるように、
じゅんの会社の後輩である佐野(大谷亮平)とその妻(野々すみ花)の夫婦のことが描かれています。
佐野はいかにも男女の心の機微に通じているかのように、
悩んでいるじゅんにいろいろなアドバイスをします。
奥さんは実家から離れて日中一人で寂しいのではないか・・・?など。
ところが実はこの結婚5年目の佐野夫妻こそが
互いの気持ちがわからずに危機に瀕していたりする。
毎日ともに暮らしていてもなお、互いの気持ちがわからない、夫婦とは謎である・・・と、
まあ、現に結婚している方なら、つい頷いてしまうことなのではないでしょうか。
しかしそれでも、わかり合おうという気持ちが大切なわけですね。
本作はあえて、妻・ちえが死んだふりをする理由を言葉では解説していません。
それは、彼女の母親が早くに亡くなったことや、
日頃夫に「絶対に私より先に死なないで」と言っていたことと関係するのかもしれないけれど・・・、
それこそ、長い言葉で分析するのは野暮というもの。
ご覧になった方、それぞれ考えてみるのがいいですね。
ちえがよく口にする「月がきれいですね。」この真意も最後に明かされます。
素直にストーレートな言葉で気持ちを表すことができない、シャイなちえさんでした。
今後安田顕さん出演作は、大泉洋さん以上に見逃せないなあと思う次第。
<シネマフロンティアにて>
「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」
2018年/日本/115分
監督:李闘士男
出演:榮倉奈々、安田顕、大谷亮平、野々すみ花、浅野和之、品川徹
夫婦のあり方を考える度★★★★☆
満足度★★★★☆