赤子はなぜ泣くのか
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泣き童子 三島屋変調百物語参之続 (角川文庫) |
宮部 みゆき | |
KADOKAWA/角川書店 |
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三島屋伊兵衛の姪・おちか一人が聞いては聞き捨てる変わり百物語が始まって一年。
幼なじみとの祝言をひかえた娘や田舎から江戸へ来た武士など
様々な客から不思議な話を聞く中で、おちかの心の傷も癒えつつあった。
ある日、三島屋を骸骨のように痩せた男が訪れ「話が終わったら人を呼んでほしい」と願う。
男が語り始めたのは、ある人物の前でだけ泣きやまぬ童子の話。
童子に隠された恐ろしき秘密とは―
三島屋シリーズ第三弾!
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宮部みゆきさんの三島屋シリーズ。
読んだことはあるような、ないような・・。
多分何かのアンソロジーに収録されていたものを読んだかもしれません。
それで何故か途中の3巻目から読みました。
短編集の体裁なので、途中からでも特に問題はありません。
三島屋伊兵衛の姪・おちかが、様々な人から不思議な話を聞きます。
本巻には、「魂取りの池」、「くりから御殿」、「泣き童子」、
「小雪舞う日の怪談語り」、「まぐる笛」、「節気顔」の6篇が収められています。
表題の「泣き童子(わらし)」は、
ある赤ん坊が、特定の人のいるところでだけとてつもない勢いで泣き出すのです。
それはその人物が行う「悪事」に反応しているのでした。
押し込み強盗の一家惨殺から一人生き残ったその赤ん坊を、
語り手の老人が引き取ったのですが、この子が老人の娘の前で、また火のついたように泣き出した・・・。
人知れず行った悪事を糾弾するかのように泣き出す赤子。
泣かれる人物にとってはいつも責め立てられるようで辛いことですね・・・。
そこでまたおこる悲劇と、新たなる不可思議な怪異。
考えさせられてしまうストーリーでした。
また、「まぐる笛」では爬虫類めいた人食い怪物が登場。
スペクタクルです!
残忍で、かなりゾッとさせられます。
しかしその事情を知れば実に切ない・・・。
「小雪舞う日の怪談語り」は、
おちかが三島屋ではなく他所で行われている百物語を聞きに出かけます。
そのなかでいくつかの怪異の話が語られるという、ちょっとオトクな短編。
理屈では割り切れない物語の数々が、
おちかの傷つき閉ざされた心を開いていくようです。
図書館蔵書にて(単行本)
「泣き童子 三島屋変調百物語 参之続」宮部みゆき 文藝春秋
満足度★★★★☆