物語を生きようとする、私たち
人はなぜ物語を求めるのか (ちくまプリマー新書) | |
千野 帽子 | |
筑摩書房 |
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人は人生に起こる様々なことに意味付けし物語として認識することなしには生きられない。
それはどうしてなのか?
その仕組みとは?
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「人は人生に起こる様々なことに意味付けし物語として認識することなしには生きられない。」
紹介文にもある通り、私達は身の回りのことを「物語」として理解しようとします。
自分の子供を虐待死させたり、包丁を持ち出して通行を切りつけたり・・・。
私達はその人が「なぜ」そんなことをしたのか、その意味を考えずにいられません。
そして報道もそれを探りたくて、様々な角度から犯人の実像に迫ろうとします。
起こった出来事に原因・理由をみつけて何らかの「物語」を作らないと、
自分の中に落とし込めないのですね。
本作はそんな私たちの心のメカニズムを説くとともに、その危険性をも言っています。
私達は本当のことを知りたいというよりも、
未知のできごと(異なるもの)をすでに知っているパターンの形に押し込めて
消化(同化)してしまいたいと思う。
だから、ストーリーを作り上げようとするのですが、
そのストーリーを作る上で、「私たちは**に違いない、のはずがない」というような「一般論」や、
「**すべきである、してはならない」という「べき論」に強く縛られてしまっているのです。
それだから、例えば今の自分の状況が本来あるべきストーリーとずれてしまっていることに、
悩み、苦しんでしまう。
著者は最後のまとめでこんなふうに言っています。
「従来の生きる指針(ライフストーリーメイキング)を捨てるのは先の保証がなく、
崖から落ちるくらい怖いが、そうする自由は常にある。」
悩み苦しんで煮詰まり、自ら命を落としてしまう人すらある人生というもの。
でも本来私たちは自由なのだから、一般的に当たり前とされるストーリーではなく、
別のストーリーに乗ってみることもできるのではないかな・・・。
そんなふうに私は思いました。
図書館蔵書にて
「人はなぜ物語を求めるのか」千野帽子 ちくまプリマー新書
満足度★★★.5