映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

はじめてのおもてなし

2019年06月22日 | 映画(は行)

こじれた家族も単純に考えれば・・・

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ミュンヘン郊外の住宅地に暮らすハートマン夫妻。
夫リヒャルト(ハイナー・ラウターバッハ)は大病院に勤務する医師で
まだまだ自分は若いと思い、引退などとんでもないと思っています。
しかしその実、独善的で頑固。
若干周りからは煙たがられている・・・。
一方妻アンゲリカ(センタ・バーガー)は長年勤めた教師を定年退職。
息子、娘もすでに家を出ていて、時間を持て余しています。
そこでアンゲリカは、難民を一人受け入れることを決意。
ナイジェリアからきた亡命申請中の青年ディアロ(エリック・カボンゴ)がやってきます。
彼はとても真面目で気立ての良い青年。
どうやら問題はこの青年ではなくて、家族の方にありそうで・・・。

ドイツ作品ですが、今の夫婦・家族とか社会の有り様はどこの国も同じだなあ
・・・とつくづく感じました。
気持ちの離れかけた夫婦。
離婚して子供を育てているけれど、仕事中毒の長男。
いつまでも自分探し(?)を続けていて、30代にしてまだ学生の長女。
地位にしがみつく父。
空の巣症候群の母。
都会のこんがらかった人々の関係性を、
ディアロが単純明快な目線で見つめていきます。



どんな悲惨な経験を積んだ後にディアロがここまでたどり着いたのか、
という話もちゃんと入っているところもいいですね。
難民一人ひとりが持つこうした経験を私達も共有すれば、
もっと世界は彼らに優しくなれるかも・・・。
というよりも国を捨てなければならないという状況自体を
なんとか支援して解消できればいいのに・・・と思います。



仕事に追いまくられてついに倒れてしまう長男は精神病院に送られてしまいます。
ちょっとハッとしますね。
よくあるシーンではありますが、実はこれはすでに「精神の病」なのかもしれない。
家族との生活と仕事と、本当に大切なものは何かということを忘れてしまっている状態というのは。



またお約束ではありますが、サイドストーリーとして発展する一つのロマンスもまた、嬉しいところ。
大変楽しめた作品でした。

はじめてのおもてなしDVD
センタ・バーガー,ハイナー・ラウターバッハ,フロリアン・ダーヴィト・フィッツ,パリーナ・ロジンスキ,エリヤス・エンバレク
ポニーキャニオン


<WOWOW視聴にて>
「はじめてのおもてなし」
2016年/ドイツ/116分
監督・脚本:サイモン・バーホーベン
出演:センタ・バーガー、ハイナー・ラウターバッハ、エリック・カボンゴ、フロリアン・ダービト・フィッツ、パリーナ・ロジンスキ

世界の同時性★★★★☆
満足度★★★★☆