幾重もの敵が付け狙う
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ウォータースライドをのぼれ (創元推理文庫) |
東江 一紀 | |
東京創元社 |
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「じつに簡単な仕事でな、坊主」
養父にして朋友会の雇われ探偵グレアムがニールに伝えた任務、
それは健全さが売りの人気TV番組ホストのレイプ疑惑事件で、
被害女性ポリーを裁判できちんと証言できるよう磨き上げることだった。
世にも奇天烈な英語教室が始まる。
彼女の口封じを狙う者あり、彼女を売り出して一儲けを企む者あり…
様々な思惑が絡み合うポリーゲート事件の顛末。
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「ストリート・キッズ」から始まる探偵ニールのシリーズ、4巻目です。
ニールは前巻からの続きで、ネバダの田舎で恋人カレンともに穏やかに生活していたのですが、
そこへまた、「実に簡単な仕事」が飛び込んできます。
いつもこの言葉通りに「簡単」だったことなど一度もないのですが。
おしどり夫婦としてTV番組で人気のあるランディス夫妻。
事業の方も手広く、今は「キャンディーランド」という一大テーマパークを建設中。
ところが、その夫の方のジャック・ランディスにレイプされたという女性が登場し、
マスコミを賑わせ始めます。
経済界をも震撼させそうなこの騒ぎ。
しかしそのポリーは田舎言葉丸出しで、とても裁判の証言台に立つことも難しい。
そのため彼女を一時隔離し、
正しいことば使いの特訓をするという任務がニールに下ったわけです。
しかし、様々な立場からポリーを狙う者が現れて・・・。
またニールに大変なことが起こるのですが、
実のところ前3巻ほどの生命の危機がニールに降りかかるわけでもなく、
サスペンス風味は弱まっています。
むしろコミカル要素が強い。
・・・というわけで本巻は幾分安心して読むことができます。
しかし、ウォータースライドを登れって・・・?
と思ったら、そのシーンは最後の最後に出てきました。
スリルたっぷりのこのシーン。
待ってました!!
映画「マイ・フェア・レディ」のように、
ポリーのなまりを標準語に近づける特訓シーンも楽しいですよ。
そして本来天敵のはずのポリーと、ランディスの妻・キャンディが
意気投合していくところもナイスでした。
「ウォータースライドをのぼれ」ドン・ウィンズロウ 東江一紀訳 創元推理文庫
満足度★★★.5