冒険を阻むもの
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河童のユウタの冒険(下) (福音館創作童話シリーズ) |
金井田 英津子 | |
福音館書店 |
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水源をめざし、今、旅が始まる
―北国の「恵みの湖」に棲むひとりの河童、ユウタ。
早春のある夕暮れ時、ユウタは不思議なキツネに呼びとめられます。
「そなたは旅立たねばならぬのです」。
その言葉に戸惑いながらも、やがてキツネの言う“龍川”の水源をめざし、
目的もわからぬまま、ユウタは故郷をあとにします。
「ガンバの冒険」シリーズの著者がおくる長編ファンタジー。(上)
旅立のはてに待っていたのは
―河童のユウタは、旅の仲間となった九尾の狐の孫娘アカネと天狗のハヤテとともに、
旅を続けます。
しかし、ある事件をきっかけにヒトから追われる身となってしまった3にん…。
はたして、彼らは無事、めざす水源にたどりつけるのでしょうか。
そして、道中問いつづけた、旅の目的とは?
「ガンバの冒険」シリーズの著者がおくる長編ファンタジー。(下)
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児童文学です。
斉藤敦夫さんの講演を聴く機会があり、
にもかかわらず私は「ガンバの冒険」も読んだことがなかったので・・・。
ある平和な湖に住む河童のユウタが、あるとき突然現れた不思議な狐に
「龍川の水源へ、二人の仲間とともに旅立たなければならない」と告げられのです。
その仲間とは九尾の狐(の孫娘)アカネ、そして天狗のハヤテ。
互いに見知らぬ仲間で、いったい龍川の水源へ行って何をすべきかもわからぬまま、旅たつ彼ら。
彼らの旅を阻むのは得体の知れない怪物などではなくなんと「ヒト」なのでした。
これは昔話ではなく、しっかりと現代の話なのです。
ヒトによってどんどん荒らされ、狭まっていく自然。
そして住むところと生命を脅かされている自然界の動物たち。
ヒトと自然界の動物たちはいったいどのように折り合いをつけていけばよいのか。
昨今特に住宅街にも熊が出没したりする札幌の住人としては、とても身近なテーマです。
結局その答えは出ていないのですけれど、
この本を読んだ子どもたちにじっくり考えてほしいと思います。
(責任放棄!!)
動物たちにとってヒトはやっかいな存在。
しかし本作中、さらに不可解でやっかいなヒトタチが登場します。
それは存在しているようでしていない、
ゆらゆらとただユウタたちの様子を見張り伺っている多くのヒトたち。
・・・それはスマホやタブレットで、見るともなく裕太たちを見ているデジタルのひとびと。
主体性があるのやらないのやら、意思が伝わらない。
しかし、無言の圧力があるようでもある、不気味な存在。
こんなヒトたちなんかいらない!と著者は言いたいようなのですが、
だがしかし、これが当たり前となってきている今、
逆にこのヒトたちをユウタの味方につけることはできないのかなどと私は思います。
これも次世代を生きる子どもたちへの課題。
(またまた無責任!!)
「河童のユウタの冒険 上・下」斉藤敦夫 福音館書店
満足度★★★☆☆