映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「みやこさわぎ」西條奈加

2019年09月03日 | 本(その他)

地域密着、粋と人情

みやこさわぎ (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)
西條 奈加
東京創元社

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高校生になった滝本望は、いまも祖母と神楽坂でふたり暮らしをしている。
芸者時代の名前からお蔦さんと呼ばれる祖母は、
料理は孫に任せきりだしとても気が強いけれど、
ご近所衆から頼られる人気者だ。
そのお蔦さんが踊りの稽古をみている、若手芸妓・都姐さんが寿退職することになった。
幸せな時期のはずなのに、「これ以上迷惑はかけられない」と
都姐さんの表情は冴えなくて…(「みやこさわぎ」)。
神楽坂で起こる事件をお蔦さんが痛快に解決する!
粋と人情と、望が作る美味しい料理がたっぷり味わえるシリーズ第三弾。

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お蔦さんの神楽坂日記、シリーズ3巻目。
今回は、連作短編集となっていまして、私、このシリーズは
長編よりもやはりこの短編方式のほうが持ち味が活かせるなあ・・・と感じました。

 

「アリのままで」では、望を妙に注目している女子が登場。
その子がいきなり「フランス料理のソースの中で、うんと味の濃いものは何か?」と望に尋ねてくる。
味の濃いソース?
誰かを毒殺しようとでもしているのか・・・? 
でも実はそうではなくて・・・。
自分らしさのままでいいのだ、というテーマに沿ったストーリー。
「アリのままで」はもちろん、あのアニメ作品のテーマソングですね! 
そして本作中では、なぜか部活にも入らず元気をなくしているような楓のヒミツもわかります。

「鬼怒川便り」では夏休みに入ってすぐの神楽坂祭りのことが描かれます。
札幌にいる望の両親も帰省してきて、地域のにぎやかな神楽坂祭りが始まる。
商店街の人々との交流など地元密着の生活感あふれる一作。
そんな中のちょっとした事件は、
昔、鮎を巡って望の祖父母が珍しくケンカをしていたという記憶。
何が原因だったのか・・・。

今どきの高校生、通常はあまり地域とは関わらない事が多いと思うのですが、
お蔦さんと同居する事によって、否応なく生活=地域となっている、
そういうところが心地よい物語なのです。
そう言うと辛気臭い話ばかりなのかといえばそうではなく、
ちゃんとアニメオタクとコスプレの話が出てきたりもします。

図書館蔵書にて<単行本>

「みやこさわぎ」西條奈加 東京創元社
満足度★★★.5