映画と本の『たんぽぽ館』

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「七瀬ふたたび」筒井康隆

2020年07月05日 | 本(SF・ファンタジー)

いきなり超能力大戦

 

 

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生れながらに人の心を読むことができる超能力者、
美しきテレパス火田七瀬は、
人に超能力者だと悟られるのを恐れて、お手伝いの仕事をやめ、旅に出る。
その夜汽車の中で、生れてはじめて、同じテレパシーの能力を持った子供ノリオと出会う。
その後、次々と異なる超能力の持主とめぐり会った七瀬は、
彼らと共に、超能力者を抹殺しようとたくらむ暗黒組織と、血みどろの死闘を展開する。

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「家族八景」の続編とは言いながら、
これは全くのベツモノといっていいくらいにテーマが変わっています。
「家族八景」はテレパシーという超能力をもつ女性が主人公ではありながら、
「家族」の実態、その実バラバラで身勝手な者の集まりという
皮肉な家族の様相を表すブラックな物語。
ところがこちら「七瀬ふたたび」は、いきなり正統派SFらしくなります。


お手伝い業をやめた七瀬は旅に出ますが、その夜汽車の中で
初めて同じテレパシーの能力を持った子ども、ノリオと出会うのです。
ノリオ3歳・・・。
継母に邪険にされていたノリオは、継母の事故死を期に
七瀬の弟として行動を共にすることになります。
3歳ではあまり頼りにはならない・・・。
しかし、七瀬を欲望の対象としない年齢でなければならないということで、
これも仕方ないですかね・・・。
でもノリオはこの世にたった一人の超能力者として孤独の縁にいる彼女にとって、
何よりの存在となるのでした。

 

しかしその後、彼女はタイムトラベラーやテレキネシス(念動力)を使う者、
様々な超能力者と出会うことになります。
そしてさらには、これら超能力者を人類の敵と見なし
抹殺しようとする暗黒組織との戦いが始まる・・・。


むちゃくちゃSFですね~。
そういえばこの頃、こういう超能力者の戦いというSF作品がはやっていたのかもしれません。
「幻魔大戦」とか・・・、そういえば私も読んでいたのを思い出しました。
そんなわけで、少しノスタルジーを感じました。
本作のラストは七瀬の終焉を暗示させるものだったのですが、
シリーズの続きがでていますので、この場はまだ無事のようです・・・。

「七瀬ふたたび」筒井康隆 新潮文庫
満足度★★★☆☆