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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「盲剣楼奇譚」島田荘司

2020年07月10日 | 本(ミステリ)

蘇った伝説の美剣士の正体とは・・・?

 

 

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江戸時代から続く金沢の芸者置屋・盲剣楼で、
終戦直後の昭和二十年九月に血腥い大量斬殺事件が発生した。
軍人くずれの無頼の徒が楼を襲撃、
出入り口も窓も封鎖されて密室状態となった中で乱暴狼藉の限りを尽くす五人の男たちを、
一瞬にして斬り殺した謎の美剣士。
それは盲剣楼の庭先の祠に祀られた伝説の剣客“盲剣さま”だったのか?
七十余年を経て起きた誘拐事件をきっかけに、驚くべき真相が明かされる!?

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久しぶりの島田荘司さん、吉敷竹史のシリーズです。
図書館で貸し出し予約をしてあったのですが、コロナ禍での図書館休業もあったりして、
ほとんど発行から1年近くたってやっと読むことができました!

 

舞台は、吉敷竹史の元妻、加納通子の地元、金沢。
通子の親しくしている女性の孫が誘拐されたということで、
吉敷がその事件解明に関わることになります。
この事件の根っことなるのが、この地に伝わる「盲剣士」の謎めいた英雄譚。
本作では、現在と、戦後間もない警察が機能していなかったほんの一時期の事件、
そして盲剣士の伝承となった江戸時代の出来事、
3つの時代が語られます。

 

中でも分量も多くて力が入っている、江戸時代のパーツ、これがなんとも面白い。
島田荘司さんによる時代小説!
主人公は剣の道を究めようとする美形の剣士、山縣鮎之進。
彼が、
「美形で盲目の剣士が、なぜか赤子を背負い、
たった一人で大勢の無頼のものをバッタバッタと切り倒し、
囚われていた女性たちを救った」
という伝説の主に、なるまでの物語です。
鮎之進は並ぶもののない剣の天才。
しかも彼が極めようとしているのは、木刀や竹刀の「剣道」ではなく、
真剣で、実際に人と闘うための剣の道。
しかし江戸時代、すでに戦はなく、剣道は単なる「様式美」となってしまっている。
真剣による戦いは、竹刀などとは全くのベツモノ。
そういうあたりがとても詳しく書かれていまして、実に納得。
鮎之進の無欲でどこか飄々とした感じがすごくいいです。
ファンになっちゃいました。

そこのところにあまりにも力が入っているので、
ミステリとしての「奇想」とか「どんでん返し」味は、
常の島田ミステリよりもやや薄いような気がしましたが・・・。
しかし読み物としては、最高に面白かったです!!

図書館蔵書にて
「盲剣楼奇譚」島田荘司 文藝春秋
満足度★★★★☆