緻密にくみ上げられた鮮やかなストーリー
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兎田孝則は焦っていた。
新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。
母子は怯えていた。
眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。
連鎖は止まらない。
ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊 SIT を突入させる。
軽やかに、鮮やかに。
「白兎事件」は加速する。
誰も知らない結末に向けて。
驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!
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「伊坂マジック」、確かにその通り。
本作の骨子を言えば、
「新妻を誘拐された兎田が、妻を取り返すために、ある家庭に立てこもる」
ということになるのですが、それでは語り尽くせない様々なことが平行して進行しているのです。
これをワケがわからなくならずに、しかも緊迫感を持って、
多少の順不同も臆せずに語るこの手腕こそが、
まさに伊坂マジックといえましょう。
しかも、最後まで読者を驚かすネタを隠し持っている。
ほとんど、快感です。
作中、オリオン座のことが何度も出てきます。
ヤケにオリオン座に詳しくてつい演説を始めてしまう人物が登場する。
そんな中で、オリオン座に由来する神話も語られます。
ところがこれがとても大切な伏線の一つとなった。
最後の最後、兎田の妻がそれと知らず夫を銃殺する寸前、
彼女がふと思い出すのはこの神話。
いやあ、私は感動しました。
本作中での私の一番のツボはここです。
多分読む人によって、それぞれのツボがあるのではないかな?
とにかく読んでみて・・・としか言いようがない本なのです。
「ホワイトラビット」伊坂幸太郎 新潮文庫
満足度★★★★★