映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

水曜日が消えた

2021年01月04日 | 映画(さ行)

曜日ごとに人格が入れ替わる「僕」

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中村倫也さん主演のちょっと不思議なストーリー。

幼い頃の交通事故により、曜日ごとに性格も個性も異なる7人が入れ替わる「僕」。
彼らは各曜日の名前で呼び合います。

「火曜日」は、いちばん地味で退屈な存在。
一週間で散らかり汚れ放題の家の掃除を担当したりしています。
火曜日は図書館の休館日なので、図書館に行けないのがいちばん残念なこと。

そんな「火曜日」が、あるとき一日を終え次に目を覚ましたのはなんと水曜日! 
火曜日は初めての水曜日を謳歌しますが、その後他のバランスも崩れ始め・・・。

同じ人物なのに、彼らは曜日によって全くの別人格。
釣りにハマっているもの、音楽を愛する自由人、
イラストレーター、植物好き・・・等々。
靴や洋服、カップに歯ブラシまで、すべて別々。
互いの間の連絡はノートや付箋紙にメモします。

うーむ、こういうのだと、土曜はや日曜は毎日がお休みのパラダイスですねえ・・・。
ウィークデーならお盆かお正月しかや休めない?
それは著しく損だとは思うけれど。
「火曜日」はそれなりにこんな生活が気に入っているようでもあるのです。

こんな中でも、「火曜日」を主人公としたのは、
彼がいちばん特に取り柄もなくて凡人っぽいからなのでしょう。
感情移入しやすい。

中村倫也さんは、ここのところ「オレ様」的な役が多いような気がするので、
こんなふうにちょっと気弱な感じも悪くないなあ・・・と。

彼のこんな事情を知っているのは、彼の主治医と、
なぜか常に彼のもとへ出入りしている一ノ瀬(石橋菜津美)のみ。

まずは「水曜日」が消えていくわけですが、次第に他の曜日も消え始めるのです。
それはつまり「僕」が正常に近づきつつあるということで、
歓迎すべきことではないのか・・・?
けれど、それは分散したそれぞれの個性の死を意味することでもあるのではないか・・・。

ほんの少しですが、それぞれの曜日に変身した中村倫也さんの
それこそ七変化もあり、楽しめました。

 

<WOWOW視聴にて>

「水曜日が消えた」

2020年/日本/104分

監督・脚本:吉野耕平

出演:中村倫也、石橋菜津美、中島歩、深川麻衣、きたろう

 

ミステリアス度★★☆☆☆

ユニーク度★★★★☆

満足度★★★.5