映画と本の『たんぽぽ館』

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大河への道

2022年11月13日 | 映画(た行)

伊能忠敬の○○人

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立川志の輔さんの新作落語「大河への道 伊能忠敬物語」を映画化したもの。

千葉県の香取市役所。
この市で唯一アピールできそうなのは、この地出身の伊能忠敬。
そうだ、伊能忠敬を主役とした大河ドラマを作ってもらってはどうか、
と「大河ドラマ開発プロジェクト」が立ち上げられます。
ところが、実際に脚本を書き上げる前に判明したのは、
実は忠敬は地図完成の3年前に亡くなっているということ。

つまり、忠敬の志を継いだ弟子達が地図を完成させるべく、
お上には忠敬は生きていることにして、
自分たちが必死で地図を完成させる作業を続けたのでした。

忠敬が亡くなったと知られれば、すぐに予算も打ち切られて、
地図を完成させることができないだろうと考えたためです。
無論そんなウソがバレれば、厳しいおとがめを受けて、死罪もあり得るのですが・・・。

本作は、現代の市役所職員等を演じる俳優さん達が、
合わせて江戸時代、忠敬亡き後に、
忠敬は生きているという一世一代の大芝居を打ちつつ、
地図を作り続けている人々をも演じています。
つまり、一人二役。
そこがとても面白い。

それにしても、忠敬亡き後の人々の情熱を描く物語は
とても感動的ではありますが、
これでは伊能忠敬の大河ドラマにはなり得ない・・・。
本末転倒のなり行きに、さあどうする・・・?!と思ったのですが、
なかなか渋い結論が用意してありました。

さて、その伊能忠敬の地図の精巧なこと、すごいですね。
人工衛星もドローンもない。コンピュータもない。
それでもなおかつあんな風に正確な地図を作ることができたということに、
改めて驚かされてしまいました。

伊能忠敬は、1818年に73歳で亡くなるまで、17年をかけて日本全国を測量。
11代将軍家斉の頃です。
映画中のラストにお殿様が登場。
歴史に疎い私はそれが誰に当たるのかわからなかったので、後で調べまして・・・。
測量したものを地図に書き表すには三角関数が不可欠。
私などもう、そのところでついて行けません。
忠敬の亡くなる前に、測量はほとんど終えていて、
弟子達はそのデータを地図に書き表していく作業を続けていたわけですね。

実際に大河ドラマにするにはどうするか・・・?
いっそ、主役を家斉にしてしまうのもいいかもしれない。
あ、「伊能忠敬と、その○○人」とか。

 

「大河への道」

2022年/日本/112分

監督:中西健二

原作:立川志の輔

脚本:森下佳子

出演:中井貴一、松山ケンイチ、北川景子、岸井ゆきの、和田正人、
   立川志の輔、西村まさ彦、平田満、草刈正雄、橋爪功

 

歴史発掘度★★★★☆

満足度★★★★☆