人見知りでさみしがり屋の・・・
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ある日おちかは、空き屋敷にまつわる不思議な話を聞く。
人を恋いながら、人のそばでは生きられない<くろすけ>とは……。
宮部みゆきの江戸怪奇譚連作集「三島屋変調百物語」第2弾。
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宮部みゆきさんの「三島屋変調百物語」シリーズの2巻目。
なぜ突如2巻目かと言いますと、このシリーズ、少しだけ読んだことがあるのですが、
この際きちんとぜんぶ読んでみようという気になりまして。
当ブログで調べてみれば、私は1巻目と3巻目だけ読んでいる模様。
従って、2巻と4巻以降をよめばいいというわけ。
まあ、内容もよくは覚えていないので、始めからぜんぶ読んでもいいのですけれど・・・。
とりあえず「続」の物語。
三島屋伊兵衛の姪・おちか一人が聞いては聞き捨てる変わり百物語。
本巻には四話が収められています。
一番印象に残るのは、やはり表題となっている「あんじゅう」。
漢字で書くと「暗獣」なんです。
「あんじゅう」なら、なんだかほっこりユーモラスな感じさえするのに、
漢字だとちょっと恐い。
ここに登場する「あんじゅう」は、古いお屋敷が魂を持つようになって、
それが凝り固まって形となったもの・・・とでも言いますか。
古い道具が魂を持つようになるなどというのと同様の考えで、
ある古いお屋敷に、その「あんじゅう」が姿を現すようになります。
まっくろけでぷにぷにしていて、明るいところが苦手。
幼児くらいの知能はあるようで、人見知りだけれどさみしがり屋でもある。
その家に住み始めた老夫婦は、怖がるどころが親しみを覚えて
「くろすけ」と名前をつけてかわいがるようになります。
ところが、次第に分かってきたことには、くろすけは人が好きにもかかわらず、
実は人に触られたりすると力を失い、弱っていくのです。
老夫婦はくろすけが縮んで弱っていくのに耐えきれず、泣く泣くこの家を出て行くことにします。
この家には誰も近寄らず、そっとしておくのが一番、と。
・・・と言うだけならば、単に奇妙な話。
ところが、この放置された家を舞台にして起こるのがややこしい人間模様。
恐ろしいのは、人知を越えた奇妙な現象ではなくて、やはり人の心に他なりません。
本巻では後の物語でもおなじみとなる女中のお勝さんや、
おちかがちょっと気になる手習い所の若先生・青野が初登場するので、そこも注目どころです。
<図書館蔵書にて>
「あんじゅう 三島屋変調百物語続」宮部みゆき 中央公論新社
満足度★★★★☆