ドキュメンタリーを装ったドラマ???
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ノルウェーで実際にあった絵画の盗難事件。
本作はその被害に遭った画家と絵を盗んだ犯人の、
事件後の意外な交流を追ったドキュメンタリーです。
2015年。
オスロのギャラリーで2店の絵画が盗難されます。
防犯カメラから、まもなく犯人・ベルティルは特定されて捕まったのですが、
絵をどうしたのかは、「覚えていない」の一点張り。
やがて、画家・バルボラは、ベルティルに「あなたをモデルに絵を描かせてほしい」と提案。
そこから、画家と犯人の思いも寄らない関係が始まるのです。
これは、ドキュメンタリー風に作られた斬新的な作品なのか?と思ってしまいました。
さほどに、現実離れした展開だったもので。
バルボラの描く絵画はかなり写実的です。
それは、現代的センスで、ややほの暗く人の心に訴えるようなイメージ。
通常、窃盗犯の肖像など描こうと思わないと思うのですが、
バルボラは一目ベルティルにあったときに、インスピレーションを感じたのでしょう。
そうしたことが画家としての才能の一端なのかも知れません。
その後に本人から聞くのですが、
ベルティルの幼いときに母親が出て行ってしまい、父子家庭で育ったこと。
高校時代くらいまでは成績もよかったけれど、
その後麻薬やらアルコール浸りになって人生の転落が始まったこと・・・。
入れ墨だらけのその体や本人の人となりに
バルボラは何らかの独自性を感じ取ったのでしょう。
ところで、バルボラは売れっ子画家というわけではなくて
例の盗まれた2点が彼女の代表作。
彼女の他の絵は、その後なかなか買い手が現れません。
アトリエの家賃にも苦労するような生活。
そんなことで、バルボラの生活も厳しくなってきて、
時にはベルティルがバルボラを慰めるような、
関係性の逆転が見られたりするのも、興味深い。
両人にはそれぞれちゃんと別に恋人はいるのですが。
やがて、ベルティルは飲酒運転で事故を起こして入院。
退院後はその罪で1年ほど刑務所に入ります。
なぜか刑務所でトレーニングに励んで、出てきたときには二回りほどガタイが大きくなっていたりする・・・。
やっぱり、その都度記録を取ってきたドキュメンタリーなのだなあ・・・と改めて思います。
そもそも、この二人を題材にドキュメンタリーを撮ろうだなんて、
いつの時点で思いついたのでしょう・・・?
下手な小説よりも、時には現実は面白い。
<Amazon prime videoにて>
「画家と泥棒」
2020年/ノルウェー/102分
監督:ベンジャミン・リー
出演:バルボラ・キシルコワ、カール・ベルティル・ノードランド
現実の不可思議さ★★★★☆
満足度★★★.5