おちかの決断
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三島屋の主人伊兵衛は、傷ついた姪の心を癒やすため、
語り捨ての変わり百物語を始めた。
悲しみを乗り越えたおちかが迎える新たな語り手は、
なじみの貸本屋「瓢箪古堂」の若旦那勘一。
彼が語ったのは、読む者の寿命を教える不思議な冊子と、
それに翻弄された浪人の物語だった。
勘一の話を引き金に、おちかは自身の運命を変える重大な決断を下すが……。
怖いけれども癖になる。
三島屋シリーズ第五弾にして、第一期の完結編!
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宮部みゆきさん、三島屋百物語シリーズの5巻目。
本作冒頭の「開けずの間」というのが、すごく恐かった・・・。
希望を叶えるために、なにかを代償にしてはいけない・・・と、
まあ、そういう話なのですが、
語り手以外一家全滅という恐ろしい運命をたどる家族の話が描かれます。
その根底には家族間の憎悪や嫉妬など、
結局は人の心根の恐ろしさを描くものではあるのですが・・・。
なんというか、続けてこのシリーズを読んでいくと、
次第にこちらまで毒気に当たるといいますか、
少し厄払いをしたいような気になってきます。
おちかが守り役としてお勝さんにいてもらったりするのは、
本当に必要なことだなあと、納得したりして。
そして、富次郎が話を「聞き捨て」にするために
一話ごとに絵を描くことにするのも、大きな意義があるなあと思う次第。
怪しいことを語ると、魔が寄ってくる。
本当にそんなことがありそうな気がしてしまう、本シリーズなのであります。
さてそして、表題作「あやかし草紙」。
なじみの貸本屋「瓢箪古堂」の若旦那・勘一が語り手。
読む者の寿命が書かれているという、不思議な冊子の話でした。
そこでおちかは気になってしまうのです。
勘一も実はその冊子を読んでしまったのではないか?と。
そのように問うても、勘一は否定するのですが。
そこでラストのおちかの決断が見事!!
こんなにも鮮やかに自らの命運を変える決断をしてしまうとは。
拍手喝采。
図書館蔵書にて
「あやかし草紙 三島屋変調百物語 五之続」宮部みゆき
満足度★★★★★