婚活って・・・
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婚約者・坂庭真実が姿を消した。
その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。
「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」
と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。
《解説・朝井リョウ》
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本作は、藤ヶ谷太輔さんと奈緒さん主演で映画化されていますが、
見逃していまして、そのうち機会があれば見たいと思っていました。
でも先に原作を・・・ということで。
婚約者・坂庭真実が、ストーカーにつきまとわれていると怯えているので、
先に同居に踏み切った西澤架。
ところが、彼女はいきなり姿を消してしまいます。
真美とはマッチングアプリ、すなわち婚活で知り合い付き合い始めた。
真美は控えめで真面目なタイプ。
そんな彼女が一体どんな事情でどこへ行ってしまったのか。
架は少しでも手がかりがほしくて、自分と知り合う前の真美のことを調べはじめます。
といっても彼女自身交際範囲が広い方ではなく、
彼女が東京へ出てくる前の実家や見合い相手、以前の職場の同僚・・・そんな程度。
そうして少しずつ分ってくるのは、自分は本当の真美をきちんと見ていたのか?ということ。
そして自分の中にある傲慢さ。
婚活とは近頃よく聞く言葉で、マッチングアプリで知り合って結婚したという方も結構多いようです。
そのようにうまくいくこともあるのだけれど、
実際何人もの人と会ってみても、一向にうまくいかない場合も多いようです。
そうなると次第に自分は誰からも必要とされないという思いに囚われていく。
まるで終活でいくつもの会社から不採用通知を受け取ったみたいな・・・。
そうした藁にもすがりたいような思いとはまた別に、
私たちは人を見た目とか第一印象で測ってしまいがち。
安っぽい服装でかっこワルイとか、話し方が自信なさそうとか。
本当のところはもう一歩踏み込まなければ分らないのに。
この人は自分に釣り合わない、などと思う、
そういうことも「傲慢」の一つ。
婚活をテーマとしながらも、かなり深く掘り下げられています。
あ、そもそも本当に婚活がテーマなんだっけ?と次第に思うようになりました。
これは婚活に限らず、人と人との関係性にもいえること。
そして真美の母親との関係もかなり詳しく描かれていて、
ここにも大きな問題提起があります。
どんな局面をとっても、チクリと自分の内部をえぐる部分がある。
恐ろしいくらいの小説です。
これで良い感じに収束することはないのでは・・・と思ったのですが、
用意された結末は思いのほか未来に開けていました!!
名作です!!
「傲慢と善良」辻村深月 朝日文庫
満足度★★★★★