映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「成瀬は信じた道をいく」宮島未奈

2025年01月20日 | 本(その他)

成瀬よ、信じた道をいけ

 

 

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成瀬の人生は、今日も誰かと交差する。
「ゼゼカラ」ファンの小学生、娘の受験を見守る父、
近所のクレーマー主婦、観光大使になるべく育った女子大生……。
個性豊かな面々が新たに成瀬あかり史に名を刻む中、
幼馴染の島崎が故郷へ帰ると、成瀬が書置きを残して失踪しており……!? 
読み応え、ますますパワーアップの全5篇!

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宮島未奈さん「成瀬」シリーズの2巻目。

前巻ですっかり成瀬のファンになってしまいましたが、
本巻も期待を裏切らない面白さ。

彼女を取り巻く様々な人物が語り手となって、成瀬の姿を浮かび上がらせていくわけですが、
相変わらず成瀬は、変人で、天才で、まっすぐで、正義の味方です!

 

まずは、小学生の北川みらい。
彼女は「ゼゼカラ」のファンで、このたび総合学習の
自分たちの住む地域で活動する人のことを調べるという課題で、
ゼゼカラを調べることにしたのです。
その時の成瀬は高校生。
無事に成瀬本人と対面することができたみらいは、成瀬にインタビューします。
地域を愛し、この地から世界を目指そうという成瀬にあこがれたみらいは、
成瀬のパトロールにも同行するように・・・。

 

お次は、なんと成瀬の父親、成瀬慶彦。
あの変人成瀬からは想像がつきにくい、普通に、いや普通以上に娘が大好きなパパ。
成瀬のパソコンで一人暮らし用の物件を検索した履歴を見てしまい、
娘が京都の大学に合格したら、家を出て
一人暮らしをはじめようと思っているらしいことを知って動揺します。
いやいや、もっと一緒に暮らしたい。
まだ早い。
そう思う父ですが・・・。

 

その次は、成瀬が無事京大生となり(実家から通っている)、
スーパーでバイトをはじめますが、そのスーパーの「お客様の声」に
こまごまとクレームを書き込むことを生きがいにしている主婦、呉間。
なんともユニークな登場人物設定。
しかしこれはこれでまた、実に面白く成瀬との交流が始まっていきます。

 

次には、成瀬と共にびわ湖大津観光大使となった篠原かれん。
彼女は祖母、母、自分と3代にわたってびわ湖の観光大使となることだけを目指して
これまで生きてきたという強者。
一緒に観光大使を務める成瀬はいかにも変わっていて、
付き合いにくいと感じてはいたのですが、
次第に彼女の生き方にひかれていきます。

 

そして最後は成瀬のゼゼカラの相棒にして、親友の島崎みゆき。
彼女は東京の大学に進学し、成瀬とは離ればなれになっていたのですが、
年末に成瀬に会おうと、成瀬の家を訪ねてきたのでした。
ところが、「探さないでください」とだけ書き置きを残して、成瀬は行方不明だという。
島崎は、ここまでの登場人物をすべて巻き込んで、成瀬の捜索をはじめます。

 

はあ~。
面白すぎて一気読み。
というか、読み終わるのがもったいない感じでした。

 

「成瀬は信じた道をいく」宮島未奈 新潮社

満足度★★★★★