怪文書を書いたのは誰?
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1920年代。
イギリスの海辺の町。
地元で生まれ育ったイーディス・スワンは父母と同居、独身。
そのすぐ隣の家には、アイルランド出身のはすっぱな子持ち女性、
ローズ・グッティングが住んでいます。
しかしどうやらこの隣り合う二件の家は、うまくいっていないらしい。
ある時、イーディスや他の住民の元に、匿名の手紙が届くようになります。
そこには、なんとも卑猥なののしりの言葉が書かれているのです。
普段から口の悪いローズが書いたのだろうという疑いがかかり、
怪文書は国中の関心を集め、ローズはついに法廷で裁かれることに。
このことについて、女性警官クラディス・モスや
一部の町の女性たちが独自の調査を始めます。
ここに3人の女性が登場します。
イーディスは、父のためによき淑女であろうと努めている保守的な女性。
他にも姉妹は多くいたのですが、皆結婚して家を出ています。
結婚できそうな相手もいたのだけれど、話がダメになってしまった。
どうも父が、老いた自分と妻の面倒を見させるために
イーディスだけを手元に残したのでは・・・?と彼女は薄々気づいている。
そんな時、隣に越してきた元気なローズのことをイーディスは嫌いではなかった。
でもあることがあって、彼女を遠ざけるようになってしまいます。
ローズは夫が戦死した後、1人で女の子を育てています。
とはいえ、同居している男性はすでにいるのですが。
教養もなく酒場で働く彼女はなんとも言葉使いが悪く、
周囲の女性たちからは、まともな女性ではないと敬遠されているのですが、
イーディスは家事のことなどを教えてくれるよき隣人でした。
始めのうちは。
そしてもうひとりは、警官のクラディス。
女性警官などこれまで誰も見たことがない、というような時代。
誰よりも熱心によき警官でありたいと思う彼女ですが、
女は捜査などするなと上司からいわれてしまいます。
この度の怪文書も、筆跡から見てもローズは犯人ではないと思うのですが、
上司らはハナからローズが犯人と決めつけて、
ろくな捜査をしようともしないのです。
次第に浮かび上がってくるのは、3人それぞれ全く別の立場にありながらも、
男性優位社会の中で抑圧されているということ。
女性のあるべき姿。
それは男性優位社会の中で都合のいいように制度化されたり、世間的認識が決定されたり・・・。
当の女性でさえそのことを当然のことと思わされ、受け入れていたわけです。
このような抑圧を受け、心の安定を失ったり、抗ったり、突破しようとしたり・・・
そういう女性たちの姿が描かれています。
ステキな作品だと思います。
<Amazon prime videoにて>
「リトルハンプトンの怪文書」
2023年/イギリス/100分
監督:テア・シャーロック
出演:オリビア・コールマン、ジェシー・バックリー、アンジャナ・ワサン、
ジョアンナ・マキャンラン、アイリーン・アトキンス、ティモシー・スポール
男子優位社会における女性の抑圧度★★★★★
満足度★★★★★