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アラビアの女王 愛と宿命の日々

2017年02月06日 | 映画(あ行)
西側とイスラム世界の架け橋



一次大戦前後、アラビアで活躍した人物といえばあの「アラビアのロレンス」が有名ですが、
そのロレンスよりも十数年早く、砂漠を旅していたというガートルード・ベルのストーリーです。



ガートルード・ベル(ニコール・キッドマン)は、
イギリスの裕福な家庭に育ち、オックスフォード大学を卒業。
しかし社交界の退屈さに耐えかね、テヘラン駐在公使である伯父のもとに行きます。
そこで彼女は砂漠の魅力に取り憑かれるとともに、
三等書記官であるヘンリー・カドガン(ジェームズ・フランコ)との激しい恋に落ちます。
その恋は悲劇に終わるのですが、
その喪失感でガートルードは益々砂漠にのめり込んでいきます。
その後、彼女はイラン・ヨルダン・シリアなど壮大な砂漠の旅を続け、各地の部族と交流。
いわば西側とイスラム世界の平和的共存のための架け橋となった方。
広大な砂漠をラクダとともに旅をする彼女のキャラバンの光景がいつまでも心に残ります。



基本的に彼女は「旅人」なのでしょう。
作中にある彼女のモノローグがすべてを語っているような気がします。

砂漠の中ではひたすらに孤独・・・、と。

どこまでも同じように続く風景の中、ひたすらにラクダで歩み続けるだけ。
ふと、村上春樹さんの「井戸」の話に通じるような気がしました。
そういうところではつまり、自分を見つめるしかない。
自己と向かい合い、対話することが、彼女を成長させていく。



ヘンリーと付き合っていた頃の若きガートルードは、いかにも「夢見がちの乙女」でした。
でも、その後に登場するガートルードは、
しっかりと芯の通った、自立した女性になっていました。
と言うより、そのようにきっちり演じたニコール・キッドマンに目を見張ったわけです。
しかしまた、それでも彼女の愛の泉は枯れていたわけではなかった、
という展開も良かった。
それもまた、悲しく運命づけられてはいましたが。



結局彼女が残した功績は、女性だからできたことなのでしょう。
これが男性だったら、あっという間に砂漠の民に怪しまれて、殺されていたのでは。
彼女は、国の政治のために動いていたのではありません。
アラブの文化を理解し、敬意を払っていた。
何よりもアラブが大好きだった。
もちろん言葉も流暢です。
だからこそ、どこへ行っても大事な「客人」として手厚くもてなされた。
相手をよく知り、理解すること。
拒絶ではなく。
平和への道はそれしかないようです。



「アラビアの女王 愛と宿命の日々」
2015年/アメリカ・モロッコ/128分
監督:ベルナール・ヘルツォーク
出演:ニコール・キッドマン、ジェームズ・フランコ、ロバート・パティンソン、ダミアン・ルイス、ジェイ・アブド

歴史発掘度★★★★☆
女性の生き方度★★★★★
満足度★★★★☆


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