映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「殊能将之未発表短編集」 殊能将之

2017年02月07日 | 本(ミステリ)
殊能将之さんの才能を惜しむ

殊能将之 未発表短篇集
殊能 将之
講談社


* * * * * * * * * *

デビュー後、編集部の要請で送られていた習作短篇3篇と
デビュー当時の様子を友人に書き送った「ハサミ男の秘密の日記」を収録。
独特の笑いとセンス、ペーソスを湛えた殊能将之初期作品集。


* * * * * * * * * *

殊能将之さんと言えばやはり私は「ハサミ男」を思い出します。
あっと驚く結末。
当時こういう新本格ミステリにすっかりハマっていた私には、
頼もしい作品でした。
そしてその後の石動戯作シリーズも読んだのですが、
そちらはあまり良く覚えていないかな・・・?
著者は、2013年2月に他界されています。
そしてこの短編集が出版されたのが2016年2月。
なぜ、3年も経ってから?と思うわけですが、
つまりここに掲載されている短編は、没後に発見されたということなのですね。
内容は、小品ではありますが、味があります。
特に「ハサミ男の秘密の日記」は、
「ハサミ男」がメフィスト賞を受賞したときのことが書かれていて非常に興味深い。
受賞時、著者は居所不明となっていて連絡が取れず、
編集部では大騒ぎになっていたのだとか。
いろいろな意味で貴重な一冊です。


さて、巻末の大森望氏の解説で知ったのですが、
殊能将之さんは、このメフィスト賞受賞以前、「田波正」として、
日本SF界では知る人ぞ知る、という存在だったそうなのです。
彼の評論は、「音楽と映画とアニメとSFを縱橫に切りまく」った、
という才気の持ち主。
その彼が、ふっつり姿を消して4年ほど後にいきなりミステリデビューとなったので、
以前から彼を知っていた人々の驚きは相当なものだったとか。
そんなこととは何も知らなかった私が情けない・・・。
いえ、知らないままでいるよりはマシと思うことにしましょう。
しかし、才能のある人に限って早逝してしまう、ということもママあるものですね・・・。

「殊能将之未発表短編集」殊能将之 講談社
満足度★★★★☆

図書館蔵書にて


最新の画像もっと見る

コメントを投稿