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「こころの最終講義」 河合隼雄

2017年01月16日 | 本(解説)
こころの問題は深くて謎でおもしろい

こころの最終講義 (新潮文庫)
河合 隼雄
新潮社


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心理療法家・河合隼雄はロールシャッハ・テストや箱庭療法などを通じて、
人間のこころの理解について新たな方法を開拓した。
また、『日本霊異記』『とりかへばや物語』『落窪物語』等の物語を読み解き、
日本人のこころの在り処と人間の根源を深く問い続けた。
伝説の京都大学退官記念講義「コンステレーション」を始め、貴重な講義と講演を集めた一冊。


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河合隼雄先生の本で、時々お勉強。
この本は、これまで他のもので読んだ内容もあったのですが、
ここで新たに登場したものがまた、とても興味深く読みました。


「隠れキリシタン神話の変容過程」では、
江戸時代徹底的に禁止され弾圧されたキリスト教徒が隠れキリシタンとなり、
そのまま明治時代になるまで密かに信仰を続けていたわけですが、
その内容が、原点とは似ても似つかないものに変容していたことが描かれています。
なぜそうなってしまったのか。
250年間、小さな村の中で聖書や旧約聖書の内容が伝えられていくうちに、
日本人にとって、わかりやすく受け入れられやすいように変わってきたということなんですね。
禁止されていることなので、文字に残すことはできない。
口頭伝承されていくだけなので、後になるともう誰も始めのことを知らないわけです。
明治になって禁教が解け、はじめて文字に記された隠れキリシタンの教えの記録を読み解いていく、
とても貴重な内容です。
根本には西洋と東洋の考え方の違いがあります。


「物語のなかの男性と女性」では、性のことにも触れています。
人は「心」と「体」でできている・・・、
と、私たちは通常理解しているのですが、では「性」はどうなのか。
心と体の中間に位置しているのではないか、
そしてそれはつまり「魂」と大きく関係するのではないかと先生は言います。
「性」というと、嫌なもの穢れたものと思われる傾向もあります。
それは何故かというと、
私たちは理性的に秩序を持って生きたいと思っているのに対して、
恋愛とかセックスはそれをものすごく突き動かす力がある。
だからなるべく排除して表に出さないようにしようとする考え方がでてきたのだろうと。


私の理解はまだまだ足りないと思うのですが、
今後も懲りずに河合先生を読んで勉強を続けたいと思います。


「こころの最終講義」河合隼雄 新潮文庫
満足度★★★☆☆



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