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「坂の上の雲 四」司馬遼太郎 

2019年06月23日 | 本(その他)

バルチック艦隊の苦難の航海

新装版 坂の上の雲 (4) (文春文庫)
司馬 遼太郎
文藝春秋

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明治三十七年二月、日露は戦端を開いた。
豊富な兵力を持つ大国に挑んだ、戦費もろくに調達できぬ小国…。
少将秋山好古の属する第二軍は遼東半島に上陸した直後から、苦戦の連続であった。
また連合艦隊の参謀・少佐真之も堅い砲台群でよろわれた旅順港に潜む敵艦隊に苦慮を重ねる。
緒戦から予断を許さない状況が現出した。

* * * * * * * * * *

坂の上の雲 第四巻です。
前巻から、正岡子規や秋山兄弟の個人的な事柄から日露戦争の戦況に話が進んできて、
私としてはやや興味が薄らぎ、この先読み続けられるか
不安になってきたところではありますが・・・。


本巻で興味を持ったのは、バルチック艦隊のこと。
日本海の決戦でバルチック艦隊は日本の艦隊に敗れるということは知っていましたが、
それ以上のことは何も知りませんでした。
バルチック艦隊は1904年10月にバルト海を出港。
そこから南下してアフリカ大陸を大きく迂回し、インド洋を経て南シナ海に出ます。
日本海海戦があったのが翌年5月。
当時のことですから仕方ないとはいえ大艦隊が半年以上もの航海で、
日本付近までたどり着いていたのですね。
本巻では出港してからまだマダカスカル島までしか進んでいません。
この艦隊の燃料は石炭です。
そのため度々途中の港によって石炭や水・食糧などを積み込む必要がある。
しかし、途中のアフリカ諸国はイギリス領やフランス領となっていて、
特にイギリスは当時日本と同盟を結んでいることもあって、ロシアには非協力的。
港に停泊さえもさせてもらえません。
フランス領なら良いかと思えば、フランスもイギリスに忖度して、非協力的。
長い船旅、燃料は入手が難しくしかも粗悪品。
船は故障も多くて青息吐息・・・。
日本海にたどり着くまでにどんな事になっているやら・・・と、思うわけです。
こんな大変な思いまでして戦争しなくても・・・と思ってしまいます。

さて同時に進行するのは、陸軍の戦い。
旅順での攻防戦です。
日本は旅順の港を見下ろすことができる203高地をぜひ手中にしたかった。
しかしこの作戦を阻んだのが、無能な指揮官。
頑迷に同じやり方を繰り返すばかりで戦場は日本兵の死屍累々という惨状が繰り広げられる・・・。
著者は、乃木の怠慢なやり方に業を煮やした児玉が来て、
彼が指揮をとるやいなや反撃が成功し、ロシア軍降伏に至る
・・・というように本作では描いているのですが、
それについてはいろいろと異論もあるようです・・・。

日本人にも有能な人、無能な人、いろいろあるように、
相手側ロシアにしてもいろいろ。
まあ、お互い様なんですね。


本巻中では、旅順の戦いが終わり、黒溝台の戦いに入ります。
いよいよ秋山好古、騎兵の登場。
しかしこれがまた熾烈です・・・。

明治における「戦争」の姿。
それは私の知る太平洋戦争とはまた少し違う、古風な感じがします。
が、ほとんど無駄死によのような日本兵の死に方には憤りを感じざるを得ませんが。
ともあれ前巻で心配したほどには、興味を失わずに読むことができました。

図書館蔵書にて (単行本)

「坂の上の雲 四」司馬遼太郎 文藝春秋
満足度★★★☆☆

 



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