映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛

2018年10月14日 | 映画(た行)

チューリップ・バブルと妊娠と

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世界最古の経済バブルとも言うべき17世紀オランダでの
チューリップの高騰を背景としたドラマです。
フェルメールの絵画に着想を得ていますが、登場人物はフェルメールではありません。
けれど、その絵画を意識した全体のシックな色調がステキです。
でもストーリーはクラシカルとかオーソドックスとかではなくて、なかなかぶっ飛んでいます。
うん、面白い!

修道院育ちのソフィア(アリシア・ビカンダー)は、
親子のように年の離れた豪商コルネリス(クリストフ・ワルツ)と結婚。
ほとんどお金で買われたと同じような結婚ではありましたが、
夫には大事にされて、満ち足りた生活を送っています。
ただ、夫は男子の誕生を心待ちにしているのに、一向に妊娠の気配もありません。
このまま子供ができないと、修道院に帰されてしまうのでは?と不安なソフィア。
そんな時、コルネリスは夫婦の肖像画を無名の若き画家ヤン(デイン・デハーン)に依頼します。
そこで、ヤンとソフィアが恋に落ちてしまうのです。

さて一方、ソフィア付きのメイドのマリアは
屋敷に出入りする魚屋のウィレムと恋仲になります。
ところがウィレムは、ソフィアがヤンの家に行くのをみて、マリアと勘違い。
振られたと勘違いして海軍に入り、長い航海に出てしまいます。
わけも分からず取り残されたマリアは自分が妊娠していることに気づくのです・・・。

当時のことですから、私生児を生むなどということは身の破滅と同じ。
望んでも得られない妊娠と、呪わしい妊娠が交差して・・・
という思いがけない運びとなっていきます。
まさにストーリーらしいストーリーで、しかもチューリップ・バブルなどという背景が絡んでいるのもユニーク。
当時球根一つで邸宅一軒分の価値がついたりしたそうで・・・。
ソフィアがいた修道院でその球根を栽培しているというのがまたミソでしてね。
初めこんなちょい役をジュディ・デンチが?と思ったら、
その後でもしっかり登場する重要人物でした。



そして最も心打たれるのはこの豪商、コルネリスその人であります。
確かに、まるで買うようにして妻を得たわけですが、
彼の心の広さと言うか愛情はホンモノなのです。
彼は香辛料の輸入を生業をしているのですが、この度の狂乱のチューリップには手を出しません。
意外と堅実なのであります。

そうした彼が妻の裏切りを知った時・・・、
こんな時こそ人間性が問われるわけですが・・・。
人が悪い私は、まさかこういう結末が待っているとは思いもよりませんでした。
いいですよ~、本作。
おすすめです。
17世紀の運河のある雑多な町並み。
すごくいろいろな匂いが立ち込めていそうな感じです。
あの魚など、かなりイキが下がっていて、匂いがついていそうな感じ。
でもここのうちにはコショウなどのスパイスが豊富にありそうなのでなんとかなるのかも。
衣装とか、風習とか、いろいろと興味深く楽しめました。



<シアターキノにて>
「チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛」
2017年/アメリカ・イギリス/105分
監督:ジャスティン・チャドウィック
出演:アリシア・ビカンダー、デイン・デハーン、ジュディ・デンチ、クリストフ・ワルツ、ジャック・オコンネル

ストーリー性★★★★★
真の愛度★★★★★
満足度★★★★★



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