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「愚者のエンドロール」 米澤穂信

2012年05月25日 | 本(ミステリ)
「良い出来ではあるが、正解ではない」ホータローの答

愚者のエンドロール (角川文庫)
高野 音彦
角川書店(角川グループパブリッシング)


                  * * * * * * * * *  

米澤穂信の<古典部>シリーズ第2作。
おなじみの神山高校。

2年のあるクラスで、文化祭に出展するクラス制作の自主映画を作っています。
ところが、脚本を書く少女がダウン。
ミステリであるはずのその作品は、
途中で途切れたまま、謎解き部分がない。
その謎解きを何とか考えてはくれないかと、なぜかホータローのところに依頼が来るのですが・・・。

「やらなくてもいいことなら、やらない。
やらなければいけないことなら手短に」
がモットーの省エネ少年折木奉太郎は、当然気が進まないわけですが、
千反田えるの「わたし、気になります」には非常に弱い。


廃屋の鍵の掛かった密室で、少年が腕を切り落とされて死んでいた。
彼を殺したのは誰か。


ホータローが解答を見つけ出すべきはこの命題。
今作は「金田一少年」ではないので、
実際の殺人事件が起こったりはしません。
あくまでも、自主映画のストーリーで、
どのような結末をつければ最もミステリとして納得がいくものになるのか、
そういう問題なのです。
が、米澤穂信作品ですから、そこは表向き。
実はこんなことをホータローに依頼するにいたったそのクラスの事情も隠されていまして、
ひねりの効いた読み応えのある作品となっています。


古典部のメンバーにも馴染みが出まして、彼らの会話が心地よい。
何事にも熱くならないホータローくんが好きです。
今作で、ホータローが出した解答は非常に良い出来ではあったのですが、正解ではなかった。
そんなところでちょっぴり落ち込んだりもするのです。
そんな彼がまた少し好きになりました。


「愚者のエンドロール」米澤穂信 角川文庫
満足度★★★★☆


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