映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

私の男

2014年07月19日 | 映画(わ行)
氷に閉ざされた地で



* * * * * * * * * *

禁断の衝撃作・・・ともいうべき作品です。


「地獄でなぜ悪い」と「ヒミズ」で
二階堂ふみさんには衝撃を受けていたので、
本作もきっとやってくれるに違いないとほぼ確信を持っていました。



北海道出身の熊切和嘉監督らしい前半部分の舞台。
奥尻島の災害で10歳にして孤児となった少女・花が、
遠縁の男・淳吾(浅野忠信)に引き取られます。
この子供時代の花は山田望叶さんが演じているのですが、
イメージとして確かに二階堂ふみさんの子供時代っぽいばかりでなく、
魂が抜けたように表情がないのがスゴイと思いました。
特に、淳吾のあるセリフに反応した時の目が、忘れられないのですが、
あとから思えばなるほど、
少女はその時にすべてを見抜いていたということになるのです・・・。
う~ん、これだからぼんやり見ていられない。



二人は北海道紋別の田舎町で暮らします。
冬には流氷が訪れ、流氷がこすれあってギシギシ音を立てている。
・・・というか流氷は見に行ったことはありますが、
こんなに間近で見たことはないので、こんな音は初めて聴きました。
この臨場感はスゴイ。
成長した花に、二階堂ふみさん、バトンタッチ。
この町で、孤独な二人が、互いの心の隙間を埋めるように
心ばかりか体をも寄せあっていく。
男が幼女を引き取り成長すると男女の関係になっていく
・・・というのはそれだけでも隠微なのですが、
実はそれ以上のインモラルが潜んでいます。
血の雨が滴るシーンは、やはり衝撃的でした。





やがて町の世話役的老人が流氷の上で死体で発見され、
その後この二人は東京に出ます。
しかし、生活は荒び、家の中はほとんどゴミ屋敷。
花は服装だけは身ぎれいにし、普通にOLとして仕事に出ていますが・・・。


「私の男」という題名でもわかる通り、
本作、実は二人の関係を支配しているのは女のほうなのです。
いみじくも幼い花に向かって淳吾はこういっていた。
「今日から俺はおまえのものだ。」
決して「おまえは俺のものだ」ではなく。



女は自分のために流氷の海に飛び込むこともいとわない。
そうした“生きる”ことに貪欲な彼女の怪しい魔力に、
男はなすすべなく絡め取られ魂を抜かれていくしかない・・・。
氷に閉ざされた地で起こる隠微で悲惨な出来事。
インパクト大。
そして怖いですね・・・。


「私の男」
2013年/日本/129分
監督:熊切和嘉
原作:桜庭一樹
出演:浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、藤竜也、モロ師岡

インパクト★★★★★
満足度★★★☆☆
(作品のデキと好みは別ということで、ご勘弁を・・・)


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