君たちに明日はない (新潮文庫)垣根 涼介新潮社このアイテムの詳細を見る |
この物語、実に特異なのはこの主人公、村上真介の仕事。
リストラ請負会社に勤めています。
近頃大企業でもコスト削減のため、人減らしに躍起。
しかし、なかなか自分の会社の人員整理は人情的にもやりにくいということでしょうか。
首切りのための仕事を外注してしまおうという。
すごいですねー。
こんな仕事、あったんですね~。
知らなかった・・・。
って、あれ?これは架空の商売なんですか?
私は本気にしてしまいましたが、
こんな仕事、あってもよさそうな気がしてきます・・・。
さて、その村上真介。
いろいろな会社に出かけて、退職を勧める面接の仕事をするのです。
恨まれ、なじられ、泣かれ・・・、
全くしんどい仕事ながらも、彼はやりがいを感じている。
ある日、建材メーカーの面接に行って出会った課長代理、
非常に気の強い女性、芹沢陽子。
真介よりは8歳年上。
しかし、彼は彼女に好意を覚えて・・・。
さて、この真介さん、仕事もユニークなのですが、
この人自身もすごくユニークなんですよ。
こんな描写があります。
“三つボタンのブラックスーツをかっちりと着こなした、若い男。
・・・、短髪が今風に根元から立ち上げられ、しかもごく軽く、脱色してあるようだ。
・・・顔つきは---そう、なんといえばいいのか
とうの立ってきたジャニーズ系のアイドルを、一晩糠漬けにしたような顔。
美男子といえば言えないこともないが、
ぱっと見た全体の雰囲気が、とにかく軽薄この上ない。”
「こんな奴に、首を切られるのか・・・」と、思わずカッとなる陽子。
ところが、この真介の女性の好みと来たら、
気がきつそうな、きりっとした顔つきの女。
モノ言いもずけずけしていて、その辛辣さがかえって笑いを誘うタイプなら、
なおいい。
・・・ということで、陽子はど真ん中のストライク。
もともと、年上好みなんですねえ・・・。
そんなわけで、いろいろあった末にこの二人は付き合いを始めるのですが、
そのやり取りがなかなかたのしいのです。
思わず笑ってしまいます。
まあ、真介はこの様に見かけは軽薄なんですが、
仕事は熱心でかっちりしていまして、
この陽子のほかにも、様々な出会いを繰り返してゆく。
いろいろな人の生き様の断片を見つめながら、
ストーリーは軽快に進んでゆきます。
すごく、読ませるんです。
仕事と私生活、このバランスのとり方が絶妙だと思います。
登場人物も個性的で魅力たっぷり。
また、素晴らしい本に出会ってしまったなあ・・・!
続編も出ているので、すぐそちらにも行きます!
満足度★★★★★
文章は読みやすいのでするするっと読んでしまいましたが、何回か読む事に感想が変わってくる作品のような気がします。
またまた、新しい作家さんを教えていただきありがとうございました(●^o^●)。
気に入っていただけて、よかったです。
この方の、「ワイルド・ソウル」も、いいですよお~。
垣根涼介さんといえば、どちらかというとこの、冒険アクション系のイメージが私にはあって、むしろこの「君たちに明日はない」のようなモノの方が意外だったのですけれど。
でも、よかったですよね。