映画と本の『たんぽぽ館』

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「ツバキ文具店」小川糸

2018年10月02日 | 本(その他)

今だからこそ“手紙”

ツバキ文具店 (幻冬舎文庫)
小川 糸
幻冬舎

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鎌倉で小さな文具店を営むかたわら、手紙の代書を請け負う鳩子。
今日も風変わりな依頼が舞い込みます。
友人への絶縁状、借金のお断り、天国からの手紙…。
身近だからこそ伝えられない依頼者の心に寄り添ううち、
仲違いしたまま逝ってしまった祖母への想いに気づいていく。
大切な人への想い、「ツバキ文具店」があなたに代わってお届けします。

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鎌倉で小さな文具店を営み、時には手紙の代書を請け負うという
通称ポッポこと、鳩子。
その彼女の物語。


今や、個人の書店も珍しいですが、文具店というのも珍しいですよね。
私が子供の頃には学校のそばに必ず文具店があったような気がしますが、
今やちょっとした文具ならコンビニかスーパーで用が足りる・・・。
それに加えて、手紙の代書と来たら・・・。
今どきそんな商売があるのか・・・と思うわけですが、
でも本作を読むと素晴らしく魅力的な商売に思えます。
昨今、まともに手紙をかくことなどないので、
だからこそ今、実は貴重な仕事だなあ・・・と思えます。
そしてまた、古都鎌倉ならではだなあ・・・と。


ポッポはこの店の先代である祖母に赤ん坊の頃から育てられたのですが、
優しくしてもらった記憶が全然ありません。
小さい頃からしつけが厳しく、そして、
代書屋としての訓練である書道を徹底して仕込まれてきたのです。
彼女が幼い頃はそれが普通だと思っていたのですが、
長ずるに従い、コレは普通ではないと気づいていき、
高校生の時には反抗心一杯で立派なヤンキーに。
あくまでも祖母に反抗する彼女は、その後海外で放浪生活をすることになるのですが、
やがて祖母が亡くなり、この地に戻ってきたのです。
しかし、幼い頃から祖母に叩き込まれた技が、ここで役に立った。
ポッポは祖母の後をついで文具店を再開し、代書の仕事も請け負うことに・・・、
というのが、本作が始まる前の経緯です。
そして、ご近所や代書の依頼に来る様々な人と触れ合ううちに、
次第に祖母の気持ちを理解していく・・・。


ほんのりと温かみがあって、ユーモアにくるまれてもいる、
こういう物語、いいですよね~。
大好きです。
それにしても代書とは言いながら、「手紙」の力にあらためて驚かされます。
ポッポは一通の手紙に誠心誠意向かい合います。
手紙の内容や差出人に合わせて用紙を選び、筆記具を選び、
封筒、切手にまで配慮します。
こんなふうにしたためられた手紙に、心が通じないわけがない。
こんな手紙を(できれば絶好状でなくて)受け取ってみたいものです。


本作の登場人物たちの名前が、それぞれニックネームになっているのですが、
これがとてもイメージしやすくて素敵です。
隣人のおしゃれなおばさまは、れっきとした日本人だけれど「バーバラ」さん。
ちょっといかつい感じのオジサマには「男爵」。
小学校教師の女性に「パンティ」とはびっくりですが、そのワケを聞けば納得。
そして終盤にはラブストーリー!!にまでなっていって、なんともウレシイ読後感。
素敵でした。


「海街ダイアリー」や本作などを読むと、鎌倉に住んでみたくなりますね。


それで本作の続編である「キラキラ共和国」がとっくに出ていて、
すご~く読みたいのですが、図書館予約より文庫化を待ったほうが早そうです・・・。

「ツバキ文具店」小川糸 幻冬舎文庫
満足度★★★★★



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