女王の孤独
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1887年、ヴィクトリア女王在位50周年記念式典で、
記念硬貨の贈呈役に選ばれたインド人アブドゥル・カリム(アリ・ファザル)が、イギリスへ渡ります。
ヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)は、
王室のしきたりを気にせず、真っ直ぐな笑顔を向けるアブドゥルに心を開き、
身分、年齢差を超えた友情が芽生えていきます。
ところが、この二人の親密さを快く思わない周囲の人々は、なんとかこの二人を引き離そうとしますが・・・。
老境に入り、体力も失われ、親しくうちとけられる人々は先に亡くなってしまっている。
しかし女王としての責任だけは大きいまま。
日々多くの人々に囲まれながら、孤独に陥り心がふさぎ込んでいく・・・。
ちょうどそんなときだったのですね。
率直で明るくて利発で、しかもハンザムな青年に心を奪われていくヴィクトリア女王。
そりゃそうですよね。
私だってイケメンの若い男性に優しくされたら、すっかり熱を上げてしまうに違いありません。
「後妻業の女」などという言葉もありますが、逆バージョンだってアリですよね。
いや、アブドゥルは別に詐欺ではないのですけれど・・・。
彼は事実優しかったし、好奇心が強くて、女王との交流を心から楽しんでいたように見受けられます。
でも少なくとも本作中では、完璧に女王に醉心したナイトというわけでもないように見受けられる。
女王にのつま先にひれ伏してキスをしたりするのは、明らかにパフォーマンスだし、
結婚していることを隠していたり、性病持ちだったりと、結構チャラいのです。
だからまあ、本作は、そうした彼の内面に深く切り込むという趣旨ではなく、
そんな男にウツツを抜かしてしまった女王の孤独をこそ描いた作品、と見たほうが良いと思います。
いくらなんでもそんなふうに一人だけをえこひいきして取りたれれば
周囲が混乱することくらいわかりそうなこと。
そうした判断力も失われていたのはやはり“老いと孤独”のせいでしょうか・・・。
絶大な権力を持ちながら、自由な旅行などもってのほか。
女王はどんなにかアブドゥルの語るインドの地を自分の目で見てみたかったことでしょう・・・。
そうした感慨を私達に呼び起こすところでは、成功しています。
人種差別を抜きにしても、皇太子や首相、王室職員が
「インド人に王室を乗っ取られた」と思うのは無理もないことに思えますし、
挙げ句にアブドゥルの生命の危機さえ呼びかねないと私には思えましたが、
彼はずいぶんのんきそうでしたね。
とりあえず、生きて帰ることができただけでもめでたいと思わなければ・・・。
<シアターキノにて>
「ヴィクトリア女王 最期の秘密」
2017年/イギリス・アメリカ/112分
監督:スティーブン・フリアーズ
出演:ジュディ・デンチ、アリ・ファザル、エディ・イザード、アディール・アクタル
歴史発掘度★★★☆☆
女王の孤独度★★★★★
満足度★★★☆☆
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