戦争の英雄が起こした事件とは
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1919年。
第一次世界大戦が終え、平和が訪れたフランスの片田舎。
戦争の英雄であるはずのジャック・モルラックが事件を起こし、
ひと気のない留置場に留め置かれていますが、かたくなに黙秘を続けています。
彼を軍法会議にかけるか否かを決めるため、
パリから来た軍判事、ランティエ少佐が聴取を開始します。
そして、留置所の外で吠え続けている一匹の犬のことが気になります。
それはモルラックの飼い犬で、彼が留置所に入ってからずっと何日もそこを動かず、
吠え続けているというのです。
ランティエ少佐は、以前モルラックと付き合っていたという女性・ヴァランティーヌの元を訪ねますが、
はかばかしい回答を得られません。
モルラックはどうして事件を起こしたのか・・・?
本作、具体的にモルラックがどんな事件を起こしたのかは、
最後に明かされるという、ちょっとひねった作りをしています。
でもそれは殺人とか、それほど生臭い犯罪ではありませんので、ご安心を。
けれど、モルラックが体験した戦争での出来事のほうがよほど悲惨で残酷なのです。
そしてそれは彼一人が味わったものではない。
戦場に駆り出された兵士なら誰もが体験したこと・・・。
モルラックは農家の生まれで、さしたる教養もない、ごく平凡な男。
国の方針のままに徴兵されたのです。
そのとき、モルラックの恋人が飼っていた犬が付いてきてしまったのですが、
当時、犬を引き連れた従軍もなくはなかったようで・・・。
膠着状態となった戦況の中、モルラックはフランス軍と友軍の
ロシア軍の兵士たちとも交友ができます。
そしてなんと敵方のブルガリア兵たちとも。
そんな時、ロシア革命が起きて、盛り上がるロシア兵たち。
共に喜ぶモルラック。
別に特別な「思想」を学んだわけではないのですが、
そんな中で彼の中に支配者と被支配者の断絶のようなものを
感じ取っていったようでもあります。
そしてまた、そんな時に起こってしまった大きな悲劇。
それは彼が連れていた犬のせいで起きたのでしたが・・・。
けれど結局の所、モルラックが革命記念日にその「事件」を起こしたのは、
そうした「思想」のためではなく、恋人に裏切られたと思った「心」のためだった・・・
という結論は、ホッとするような、残念なような、
何やらモヤモヤしてしまうのですが、まあ、人の心というのはそうしたものなのかも知れません。
小さなことだけれど、真剣に真相を突き止めようとする軍判事さんがステキでした。
<Amazon prime videoにて>
「再会の夏」
2018年/フランス・ベルギー/83分
監督:ジャン・ベッケル
原作:ジャン・クリストフ・リュファン
出演:フランソワ・クリュゼ、ニコラ・デュボシェル、ソフィー・ベルベーク、
ジャン・カンタン・シャトラン、パトリック・デカン
満足度★★★★☆
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