映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「R帝国」中村文則

2022年10月26日 | 本(その他)

恐るべき予言の書? 

 

 

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近未来の島国・R帝国。
人々は人工知能搭載型携帯電話・HP(ヒューマン・フォン)の画面を常に見ながら生活している。
ある日、矢崎はR帝国が隣国と戦争を始めたことを知る。
だが何かがおかしい。
国家を支配する絶対的な存在"党"と、謎の組織「L」。
この国の運命の先にあるのは、幸福か絶望か。
やがて物語は世界の「真実」にたどり着く。

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近未来の島国R帝国が舞台・・・。
まあ、言わずともそれがどこを暗示しているかは一目瞭然なのですが。

それにしても恐ろしい物語です。

R帝国は、民主国家を歌いながらもその実しっかり独裁国家を突き進んでいます。
そこで語られる戦争の真実は恐ろしいけれど、
実のところを突いているように思います。
第一このR帝国の状況は今のロシアの状況にあまりにもそっくり。
アール帝国のRはロシア?としても全然おかしくないですね。
とはいえ本作は2017年に発刊されたものなのですが。

そしてこの国家を支配する“党”に反抗する謎の組織が「L」。
つまり単純には「R」と「L」は「右」と「左」という風にも解釈ができるのですが、
この文庫の巻末で、著者がもっと恐ろしい意味についてを示唆しています。
何やら世界全体がきな臭い感じがする昨今・・・。

本作が単に想像力がたくましすぎる近未来小説であることを祈ります・・・。

 

それと本作で描かれる、HP(ヒューマン・フォン)のことも気になります。
人工知能搭載型携帯電話。
今のスマホのさらなる進化形。
人工知能搭載のそのマシンは、すでに人格を宿しているようで、
人々にとってはなくてはならない助言者のようなものになっています。
そこに“党”の意志が入り込んだとしたら・・・。
人々は簡単に支配されるようになるでしょうね。

暗澹たる未来。
こちらもまたそうならないように祈るばかり。

 

「R帝国」中村文則 中公文庫

満足度★★★★☆



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