私は誰と結婚したのか?
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里枝(安藤サクラ)は、離婚後子供を連れて故郷へ帰り、
やがて出会った谷口大祐(窪田正孝)と再婚します。
新たに生まれた子供も含めて、家族は寄り添って幸福な時間を過ごします。
ところが、不慮の事故で大祐は亡くなってしまいます。
大祐の一周忌に、大祐とは長く疎遠だったという兄が現れ、
大祐の遺影を見て言うのです。
「これは、大祐ではない。」
では、里枝が結婚していたのは、一体誰だったのか・・・?
弁護士・城戸(妻夫木聡)は、里枝の依頼を受けて、
亡くなった里枝の夫は、本当は誰だったのかを調べ始めます。
次第に浮かび上がるのは、一人の男の切ない人生・・・。
物語は、“谷口”の人生ばかりではなく、城戸の人生も浮かび上がらせていきます。
在日韓国人3世の彼は、そのことでこれまでいやというほど周囲から蔑みや、差別を受けてきた。
結婚相手の資産家の親も、どことなく城戸を見下している。
暮らし向きは豊で、妻子があって、まずは成功者の部類ではあるけれど、
城戸こそが、戸籍を他の誰かと入れ替ることができるならば入れ替わってしまいたい
という思いを抱えてもいるわけです。
そんな城戸が調べを進めるうちに、戸籍を交換することを商売とする人物がいた、
ということが分かってきます。
現在服役中のその男を演じるのが柄本明さんで、まさに「食えない老人」というのがピッタリ。
戸籍を丸ごと入れ替えて、自分のアイデンティティまでを消してしまいたい、
そうまで思うのはどういう人なのか。
それは自分自身というよりも、家族の問題でもあるわけですね。
まあ、それ以前に、何かと周囲と違う人を見下し差別し、
時には排除しようとする「社会」の問題なのです。
そうした問題を鋭くえぐる本作。
見応えたっぷりでした。
“谷口”が、最後に過ごした結婚生活が、穏やかで幸福なものだったことが唯一の救い。
彼と入れ替わった本物の「谷口」が、仲野太賀さんだったのが、個人的にウケました
<シネマフロンティアにて>
「ある男」
2022年/日本/121分
監督:石川慶
原作:平野啓一郎
出演:妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、清野菜名、眞嶋秀和、真木よう子、柄本明
社会問題をえぐる度★★★★★
満足度★★★★★
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