映画と本の『たんぽぽ館』

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アリスのままで

2015年07月27日 | 映画(あ行)
壊れていく自分と向き合うこと



* * * * * * * * * *

ジュリアン・ムーア、第87回アカデミー賞主演女優賞獲得作品。
見たかったのですが、なかなかタイミングが合わず、
ほとんど諦めかけていましたが、やっと見ることができました。



ニューヨーク、コロンビア大学で教鞭をとる言語学者アリス(ジュリアン・ムーア)50歳。
講義中に言葉が思い出せなくなったり、
ジョギング中に道がわからなくなったりということが起こるようになり、受診。
若年性アルツハイマーとの診断を受けてしまいます。
次第に記憶や知識が薄れていく恐怖。
家族の戸惑い。
まだ記憶が薄れてしまう前に、アリスは後の自分に向けて、
ビデオメッセージを残すのですが・・・。



よりによって言語学者が言葉が思い出せなくなるというのが切ないですね。
自分がこれまでの間、積み上げてきた知識や経験、人間関係・・・これらが崩壊していく。
ジュリアン・ムーアがアリスの変化を実にリアルに演じています。
それは、あのビデオメッセージを後のアリスが見るところで歴然とします。
あんなに、知的に輝いていた目や表情が、
すっかり弛緩して、ぼんやりしたものになってしまっている。
わずかの期間にこんなにも・・・と、驚かされる場面です。
そこまでの変化を、ジュリアン・ムーアが徐々に不自然でないように演じていた、
ということの証でもあります。



アリスが「ガンなら良かったのに」というところがあります。
ガンならば皆に同情されながら、やがて消えていく。
しかしアルツハイマーは、人から奇異に見られ、ずっと生きていく。
でも病を選ぶことはできないし、
それを言えば健康が一番なのは明らかですもんね。
運命としか言いようがない、病。
向き合うのは辛いです・・・。



それにしても本人も辛いのですが、それを支える家族も大変です。
アリスの世話も必要だし、けれどこの生活を支える収入も必要だ。
それぞれに築いてきたこれまでの人生もある。
そういうものを全て見なおさなければならない。
そういう辛さを本人はよくわからないということだけが幸いなのかもしれません。
家族の愛情がまさに試されてしまう、そこもちょっと怖いです。



けれどなんというか、こういうドラマは以前にもあったと思うし
あるべき話がなるようになっただけ・・・
という印象も拭えない。
ちょっぴり素直でない私でした。


「アリスのままで」
2014年/アメリカ/101分
監督:リチャード・グラツァー、ウォッシュ・ウエストモアランド
出演:ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、ケイト・ボスワース、ハンター・パリッシュ
満足度★★★☆☆


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