映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「鎌倉うずまき案内所」青山美智子

2020年03月12日 | 本(その他)

微妙に関係しながら渦を巻く時間、人の絆

 

 

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古ぼけた時計屋の地下にある「鎌倉うずまき案内所」。
螺旋階段を下りた先には、双子のおじいさんとなぜかアンモナイトが待っていて…。
「はぐれましたか?」
会社を辞めたい20代男子。
ユーチューバーを目指す息子を改心させたい母親。
結婚に悩む女性司書。
クラスで孤立したくない中学生。
いつしか40歳を過ぎてしまった売れない劇団の脚本家。
ひっそりと暮らす古書店の店主。
平成時代を6年ごとにさかのぼりながら、
6人の悩める人びとが「気づくこと」でやさしく強くなっていく―。
うずまきが巻き起こす、ほんの少しの奇跡の物語。

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うっかりすると、鎌倉の観光案内本?と思い、見過ごしそうなこの題名。
しかしこれがなかなか楽しく読める連作短編集でした。

会社を辞めたいと思っている20代男子。
ユーチューバーを目指す息子を改心させたい母親・・・。
人生の進むべき道を見失っている人々が、古ぼけた時計屋の地下、
らせん階段を降りた先にある「鎌倉うずまき案内所」に迷い込みます。
そこで彼らは不思議なものをみて、謎のメッセージを受け取ります。
そして “困ったときのうずまきキャンデー”を一つもらって日常にもどってくる。


結局解決に向かうのは自分自身の力。
でも確かに彼らは「案内所」で力をもらい、背中を押してもらうのです。


本作は2019年、すなわち平成の最後の年からはじまって、
1話終えるごとに6年、時間を遡ります。
1989年(平成元年)まで全6話。
読み進むと、以前に登場した何年か前の人物がチラリと登場したりする。
なるほど、人と人はこんな風に微妙につながって、皆が生きている。
そんな中、全話に登場するのがSF作家の黒祖ロイド。
第一話ではすでにベテラン作家。
その彼の作家人生が6年ごとに垣間見えて、
そして最終話が「黒祖ロイドビギニング」となっているのがなんともしゃれている。
そしてそこにはなんとも意外な事実が隠されていたりします。
この構成の妙に脱帽。
最後まで読んだらもう一度逆回しで読んでいきたくなります。

蚊取り線香、つむじ、巻き寿司、ト音記号。花丸。ソフトクリーム。
うずまきにもいろいろあるものですね。
この渦巻き模様のことをクロソイド曲線と言うのだそうで、
まあ、黒祖ロイドの命名のヒントです。

「鎌倉うずまき案内所」青山美智子 宝島社
満足度★★★★.5

 



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