半地下ならまだ良かった・・・
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家族全員失業中のキム一家は、ジメジメして虫が出る環境の悪い半地下の家に住んでいます。
あるとき長男が家庭教師としてIT企業CEOパク氏の豪邸へ通うことになります。
そして家族であることを隠して、次々に妹をアート指導の教師に、父を運転手に、
そして母を家政婦としてこの家に引き入れてしまいます。
しかし主人一家が留守の大雨の夜、ある人物が訪ねてきて・・・。
パラサイトは寄生虫のことですね。
この一家が大富豪の家に寄生してうまい汁を吸う、と。
けれど、確かに身分詐称、経歴詐称ではあるけれど、
キム一家は意外と優秀でしっかり仕事をこなします。
多少給料が高すぎ(?)かもしれないけれど、
それは支払う側が納得して決めたことだし、
つまりWin-Winの関係だったのですよ、ここまでは。
ところが彼らは「半地下」よりももっと惨めな「地下」の生活を見てしまうのです。
それが故に、キム一家の人々は富めるものと貧しい自分たちとの格差を、
それまで以上に感じるようになってしまう・・・。
どうにもならない格差。
今はその格差も埋めることは絶望的に難しくなってきているように思います。
お金持ちのパク氏の一家は基本いい人たちなんです。
優しく素直で純粋。
特にここの母親が「天然」といっていいくらいに、人を信じて疑わない。
けれど、お母さんは言いますね。
「私だってお金をたくさん持っていれば、誰にだって優しくなれるよ」と。
確かに。
その優しさは「ゆとり」のなせる技か・・・。
でもそんな優しさも、ふとしたところから本性が露呈します。
パク氏が「運転手の匂いが我慢ならない」と奥さんに言っているのを
密かに本人が聞いてしまうのです。
この言葉がお父さんの心にグサリと刺さっていて、
そして終盤の大惨事へとつながっていきます。
いつから経済の格差=人格の格差みたいな風潮になってしまったのでしょう。
コメディタッチでありながら、私たちの心にもグサリと突き刺さります。
そして本作のラスト。
一瞬希望を見せておいて、やはりそれは「まぼろし」に過ぎないという、
恐ろしい現実を突きつけられたような気がします。
<シネマフロンティアにて>
「パラサイト 半地下の家族」
2019年/韓国/132分
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジュン、チェ・ウシク
格差度★★★★★
大惨事度★★★★☆
満足度★★★★★
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