映画と本の『たんぽぽ館』

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残された者 北の極地

2021年02月10日 | 映画(な行)

大丈夫、一人じゃない

* * * * * * * * * * * *

飛行機事故で北極地帯に不時着したオヴァガード(マッツ・ミケルセン)。
壊れた飛行機をシェルター代わりにし、
外を歩き回り、魚を釣り、救助信号を発するというルーティンをこなし、
生き延びていました。

そしてついにヘリコプターが現れるも、強風のため墜落。
乗っていた女性パイロットは大けがを負っています。
瀕死の彼女を見て、彼はついに自らの足で窮地を脱することを決意しますが・・・。

札幌の最高気温が-8.4℃という日に、本作を見ました。
寒い、寒い・・・。
厳寒の舞台が身にしみます。
家なら暖房があるけれど、ここではせいぜい寝袋にくるまって暖を取るのみ。
ムリ。私には絶対ムリです。

 

冒頭、オヴァガードはせっせと雪を掘っているのです。
少し雪を掘ると黒い地面が現れる。
それで、彼は雪面に大きなSOSの文字を刻んでいたのでした。
彼がたった一人でこの地で過ごすようになってから
一体どれくらいの月日がたったものなのか、それは語られません。
というか、ほとんどセリフはないのです。
時たま彼が漏らす独り言のみ。
絶望的ではある。
けれども今すぐどうというわけではない。
氷に開けた穴に糸を垂らし、釣った魚でなんとか生き延びている。
ムリはせず淡々と・・・。
氷雪の中でたった一人。
それだけでもずいぶん強靱な精神ではあります。

ところがそんな淡々とした毎日が変わる。
傷ついた一人の女性。
かろうじて意識を取り戻しても、どうやら言葉は通じないようです。
このままなら絶対助からない。
ヘリに積んであった地図を見つけたオヴァガードは、
遠くに観測所があることに気づき、そこまで行こうと思うのです。
女性とわずかな荷物をソリで曳いて・・・。

なんという絶望的な遠さでしょう。
途中でどうしても上れない断崖があり、
かなりの回り道を余儀なくされる。
それでも一歩、一歩。
幾度も外で夜を過ごします。

彼女にオヴァガードは幾度も語りかけます。

「大丈夫、一人じゃない」

それは、彼自身にいっている言葉なんですね。
自分一人なら、こんなには決して頑張れない。
だけど、自分を頼るこの人がいるから頑張るのだ・・・。

そんな彼があるとき、とうとう彼女を見捨てて一人歩き始めようとするのですが・・・。
その時何が起こるのか。
ここが山場ですねえ・・・。

この苦行は神に試されてでもいるかのようです。

動物園で見るシロクマはかわいいものですが、
こんなところで出会うシロクマは怖い、怖い・・・。

不屈の魂とはこういうこと・・・。
執念のサバイバルの物語。

 

<WOWOW視聴にて>

「残された者 北の極地」

2018年/アイスランド/97分

監督:ジョー・ペナ

出演:マッツ・ミケルセン、マリア・テルマ・サルマドッティ

 

極限の選択度★★★★★

満足度★★★★.5



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